夢想恋華
□死の恐怖
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もう後悔はないなんて、結局逃げてるだけだった。
今死んだら、後悔はたくさんある。
まだ10代目の右腕になれてないし、リボーンさんに認めて貰ってない。
ツチノコもネッシーもチュパカブラにもまだ会えてない。
やりたい事、まだまだたくさんあるんだ。
そして何より、雲雀に好きだと伝えたい。
だけど、怖いんだ。
大切なものが、守りたい人が増えていくたびに、それを失うのが……怖い―――
*死の恐怖*
「予知能力!?獄寺君が!?」
あれから、綱吉の命を狙った賊はディーノ率いるキャバッローネに連行された。
獄寺の傷も幸い致命傷は外れていたが、血を流し過ぎたせいもあってか中々目を覚まさず、今も病室で眠り続けている。
事態を聞き付けてきたビアンキ、山本、風も集まり、獄寺が眠る病室でシャマルから獄寺の力について語られた。
普段は群れを嫌う雲雀も、少し離れた所でシャマルの言葉に耳を傾ける。
「予知能力っても、隼人の場合は人の死に関することだけなんだ。しかも、親しい人の死だけな」
「死に…関する?」
「隼人が初めて予知夢を見たのはまだ二歳の頃だったわ」
シャマルの言葉に便乗するように、ビアンキも辛そうな表情で語る。
「当時、隼人の世話係を担当していたメイドがストーカーに殺されたの。隼人は、その殺される現場の夢を見たのよ」
「二歳のガキが、性的虐待を受ける夢だぜ?」
「「っ!?」」
シャマルの言葉に、綱吉と山本が目を見開いて驚いた。
離れた所で聞いていた雲雀も、苦虫を噛むように眉間にシワを寄せる。
「隼人にはそれがどんな意味か分からなかったみたいだけど、悪い事だってことは分かったみたいね。
朝起きて、ひたすらメアリーが危ない、メアリーを助けてって泣き叫んでたわ」
「隼人の言葉を信じて俺が駆け付けた頃には、もう手遅れだったんだがな」
それからも、獄寺は夢を見つづけたという。
獄寺の家は生粋のマフィア。
城を出入りする人間の多くは生死の境を生きていた人間だ。
「あの頃の隼人は今と違って人懐っこくてな。親父さんの部下にも可愛がられてた。
だけど、そのせいで隼人はそいつらが死に直面する度に悪夢にうなされるようになったんだ」
「いつしか隼人は心を閉ざすようになったわ。大切な人を作らないようになった…」
「そんな事が…」
獄寺があまり他人を寄せつけない根本的な理由は、そこにあったのかもしれない。
「じゃあ獄寺、もしかしてツナの?」
「あぁ、恐らくツナが殺される夢を見たんだろーな」
それまで黙っていたリボーンが口を開く。
その言葉に綱吉は胸が締め付けられる。
「ツナの命が狙われた事によって、封印されていた獄寺の力が目覚めたんだろ」
「俺の……せいで」
俺のせいで、獄寺君はまた悪夢にうなされるようになってしまうのか?
大切な人が殺される夢。
今回はたまたまその夢のおかげで助かったけど、いつもそうであるとは限らない。
獄寺君の力で予知出来たとしても、守れない命だってある。
そんな時獄寺君は、どんだけ辛い想いをする嵌めになるんだろうか?
「あのさ、獄寺の力が封印されてたって、どうしてだ?保健のオッサンがなんかしたのか?」
「いや、俺はなんもしてねぇ。ある日を境に隼人の力と、それまで見た夢の記憶が封印されたんだ」
「ある日…?」
「隼人の3才の誕生日の5日後の朝、隼人は自分の母親の死を予知したのよ」
「なっ…」
綱吉達はそれ以上言葉が出なかった。
なんと言えばいいのか、分からなかった。
「その日の隼人は、目覚めることなくひたすらうなされていた。その日は隼人の母親が隼人に会いに来る日だと知っていたからな…。まさかと思って駆け付けた時には、もう…」
「そんな…」
「次に目覚めた時には、記憶も力もなくなっていたのよ」
自分の母親の死。
それを夢で予知する……しかも、助ける事も出来なかった時の獄寺の気持ちを思うと、綱吉は唇を噛み締めた。