夢想恋華

□すれ違う心
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ボンゴレとかリング争奪戦に巻き込まれるも、なんとか終わりを告げ、並盛に平和が訪れた。


うざったかった跳ね馬の修業からも解放されて清々しているはずなのに、心は全然晴れない。


獄寺の想い人が跳ね馬かもしれない……そう思うだけで胸が苦しくなった。





「お前、本当屋上好きだよな」

「…獄寺」



僕が一人で屋上にいると、獄寺が顔を出す。


屋上は好きだ。

並盛の風景が一望出来るし、何より此処に居れば君に逢えるから。



「君も人のこと言えないと思うけど?今は授業中だよ」

「今更だろ。それに、俺が此処に来るのは…」



そこまで言って、獄寺は口を閉ざし、校庭を切なそうに眺めた。

そこには体育の授業中の人の群れ。
どこのクラスか分からないが、もしかしてあの中に獄寺の想い人がいるのかなんて頭を過ぎる。

すると、獄寺が小さく声を出した。




「跳ね馬…?」

「っ…」



その言葉に、ズキンと胸が痛んだ。

獄寺の視線を追うと、校門の前に黒い外車。間違いなく、跳ね馬のものだ。




(なんだ…獄寺が此処によく来るのは、跳ね馬が来るのを待っていたからなんだ)




確かに、獄寺の教室からでは校門は見えない。
此処なら、真っ先に跳ね馬の来訪が分かる。



やっぱり、獄寺の想い人は…――





「最近、アイツよく来るよな。よっぽどお前のこと、気に入ってんだろーな」



そう言う獄寺の表情は、痛々しいほど切なそうで、僕まで胸が苦しくなった。


もしかして、僕にヤキモチを妬いてるの?

違うよ。跳ね馬が好きなのは僕じゃない。




「あのさ…何か勘違いしてるみたいだけど」

「え?」



君のそんな辛そうな顔は見たくない。

本当はずっと、君を笑顔にする方法を知っていた。
知っていたのに、それを実行することは出来なかった。


君が、跳ね馬のものになってしまうのが、怖かった。


でも、もういいよ。

僕の勝手な都合で、君を苦しめてごめんね。






「跳ね馬が好きなのは、君だよ」

「なっ……」



獄寺が大きく目を見開く。信じられないというように。




「もう隠さなくていいよ。君の想い人って、跳ね馬でしょ?」

「え、なっ……なに言って、」

「両想いだったんだよ、君達。よかったね」




必死に平常心を保って、滅多に見せる事のない笑顔を獄寺に向けた。

校庭から跳ね馬の視線を感じる。

恐らく、彼は今から此処に来るのだろう。




そしたら僕は、ただのお邪魔虫だ。




「じゃあね」

「ひ、ば…」



酷く混乱した様子の獄寺を残して、僕は屋上を後にした。



獄寺の恋はこの後、ハッピーエンドを迎える。


バッドエンドな、僕の恋とは裏腹に――






*すれ違う心*


 
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