夢想恋華

□優しい風
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「また、あの夢…」



繰り返し見る夢に、なんの意味があるのかは分からない。

途切れ途切れに聞こえる自分が最後に言った言葉がなんなのか……分からない。



分かりたく、ない。




「10代目……お迎えに行かなきゃ、」



けだるい身体を起こして、学校へ行く準備をする。


アイツを失ってしまった俺にとって、もう10代目と過ごすことだけが安らぎの時間だった。















「おはようございます!10代目!」

「おはよう、獄寺君。って、もしかして寝不足?目の下にクマが出来てるよ?」

「えっ……あ、ちょっと夢見が悪くて…。たいしたことないッスよ!」

「そう?ならいいんだけど…」



俺なんかの身体を気遣ってくれる10代目は、本当に素晴らしい方だと思う。

この方に仕える事が出来て、俺は幸せ者だ。

一生大切にしたい人。



10代目の側に居るときだけは、アイツの事も雲雀の事も忘れられた。




「あっ、今日風紀検査みたいだよ!」

「っ…!」



10代目の指差す方を見ると、風紀委員達が服装チェックをしていた。

もちろんその中心には、雲雀の姿。




「獄寺君、アクセ外したほうが…」

「大丈夫ッスよ!今更じゃないですか!」

「それはそうだけど…」



あの日から、雲雀の事も避けていた。

10代目や山本が側に居る時は雲雀は俺に話しかけたりしないから、それを利用して、避けつづけた。


何を話せばいいのか分からなかったから…。





「獄寺。それ、全部外して」

「………無理」

「…じゃあ、放課後応接室に来て。反省文書いたら許してあげる」

「……」



それだけ言って、雲雀はもう用はないというように校舎に戻っていった。

もしかして、最初から俺を呼び出すことが目的だったのか?




「なんか雲雀さん、いつもと様子が違うね?」

「…そうッスか?いつもあんなんでしょ?」

「でも、甘いって言うか…。放課後いくの?」

「………行きませんよ」



行ける訳…ないじゃないですか。


雲雀と二人っきりにだなんて、なれるわけがない。




「……行った方がいいよ」

「え…?」

「雲雀さんとなんかあったでしょ?獄寺君わかりやすいから」

「なっ…そんなこと!?」

「最近元気ないの、雲雀さんが絡んでるんでしょ?だったら行って。いつもの元気を取り戻してきて」

「10代目…」



心の底から俺を心配してくれているんだと分かって、胸が熱くなった。


だけど、無理なんですよ10代目…。

今の俺は、雲雀と真っ正面から向き合えない。




 
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