初恋迷宮

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「ありがとな、雲雀。でも、もう決めたんだ。俺はイタリアに…――」

「そんなことだろうと思ってましたよ」

「っ!?」



獄寺の言葉を遮ったのは、いつの間にか扉の前に立っていた六道骸

突如現れた骸の存在に、雲雀は眉をしかめる




「…君、不法侵入だよ。西棟に帰れ」

「クフフ。今日は見逃して下さい。隼人君に大事な話があるんです」

「っ……骸、俺…」



骸の登場にあからさまに動揺する獄寺に、雲雀は首を傾げた

昨日、二人になにがあったんだ


僕が聞いてた限りでは、想いが通じ合ったのだと思っていたが…




「隼人君、昨日…僕が好きだと言ったことなんですが…」

「っ……」

「なかった事にして下さい」

「え?」

「………は?」



何がどうしたらなかった事にしなければいけないんだ。
骸の言葉に雲雀は疑問を感じ、獄寺は戸惑った




「骸……なんで、」

「隼人君の考えは手に取るように分かります。
此処に居ると言うことは、いずれは僕に告白の返事をしなければならない。だから、イタリアに帰るんですよね?」

「っ!?」

「…?なんで、返事が出来ないのさ」

「部外者は口を挟まないで欲しいんですが…。仕方ないですね」



部外者、と言う言葉をわざと強調させながら言う骸に、雲雀の眉間のシワが更に深まった




「昨日立ち聞きしていたみたいなので、あらかた僕達の関係は分かると思いますが、」

「え……立ち聞き?」

「気付いてたの?」

「当然です。全く、天下の風紀委員長様が立ち聞きなんて、悪趣味ですよねぇ」

「いいから、話を続けなよ」

「ふぅ、分かりませんか?もし雲雀君が隼人君の父親なら、大事な娘が自分の妻を死に追いやった男の息子に言い寄られてたらどう思います?」

「……とりあえず交際なんか認めないし、咬み殺すよ………っ!?」

「その通りです。僕は隼人君のお父様には認めて貰えない。
下手をすれば、殺される。だから隼人君は、僕を遠ざけようとした。そうでしょう、隼人君?」

「……」



骸の問い掛けに、獄寺は小さく首を縦に振った



「俺の親父は、今の地位を得るまでに色々とあくどい事もしてたから、殺したりはしないまでも…多分、酷い目には合わされる…。
骸が好きだって言ってくれたの、ずげぇ嬉しかった。でも、俺はっ!」

「だから、なかった事にしようと言ってるのです」

「、…骸?」

「今の僕が隼人君のお父様に認めて貰えないのは当然です。父と同じ事をしていたのですから」

「そんなことっ…!」

「だから、少し僕に時間を下さい。
いつか必ず、お父様にも認めて頂けるような隼人君に相応しい男になりますから。それまで、昨日の言葉は忘れて下さい」




本当は、奪ってでもこの手で抱きしめたかった

隼人君の想いと、自分の想いが同じだという確信もあるから、悪い虫が付く前に自分のものにしてしまいたい



でも、今の隼人君はそれを望んでいない


僕はそんな隼人君を無理矢理自分のものになんかしたくはない



もう、これ以上……隼人君を汚したくはない



 
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