頂き物
□相互お礼品
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彼が通ると院内はしんっと静まり返る。
まるで、そこだけが時間が停まったかの様で…。
いつも独りな貴方。
そんな貴方をこの静かでつまらない部屋から見つめるのが私の習慣だった。
長い闘病生活の中、子供の頃より入退院を繰り返す私には友人と呼べる人なんていないし、勿論『恋』だってした事がなかった。
そんな中、時折この病院に定期的に入院をする貴方を見付けた。
その時、初めて…
「これが、恋だと思ったの!!」
いつものタコの様に跳ねる銀髪は落ち着きさらさらのストレートに治まり、睨み付ける切れ長の翡翠の瞳は大きなアーモンドの様にクリンクリンのキラキラに輝いている。
服装も上から下までピッシリ着こなし問題は無い。
無い、が。
「君、誰?」
獄寺隼人の姿をした別人が雲雀の前でいた。
いつもは沢田達と時間ギリギリに登校する獄寺な筈が今日は勝手が違っていた。
風紀委員達が校門を固め、皆が緊張している中に問題児・獄寺隼人は何食わぬ顔で現れた。
文句の付けようの無い完璧な制服着用、周りの風紀委員達にも柔らかい笑みを浮かべ挨拶をしている。
彼の敬愛する対十代目スマイルではなく、そうどこか女の子らしい微笑み。
それを向けられた風紀委員は次々と顔を赤らめている。
元々の顔の作りが良いため、日頃のギャップも重なり微笑みの破壊力は抜群だった様だ。
そんなAngel隼人は問題児の突然のイメチェンに軽く意識を飛ばしかけていた雲雀を視界に捉えると、それはこれ以上にないと言う程に幸せそうな極上の笑みを浮かべながら抱き着いて来た。
「会いたかった、雲雀さん」
「!」
何時もなら簡単に避けれるし、隙だらけの相手にトンファーを撃ち込むのも可能だったのだが…、いつもとは正反対の獄寺にほだされたのか雲雀は抵抗する事なく今の状況を受け入れている。
一通り雲雀の身体の温もりを堪能した獄寺(?)はいきなり雲雀から離れた。
「っ…あまりの嬉しさに思わず抱き着いてしまった…〜っは、恥ずかしいっっ」
頬が朱に染まりながら恥ずかしさから雲雀を直視出来ず、それでも見ていたい衝動に駆られた彼はちらちらと雲雀の様子を伺っている。
何なんだ?
これは、一体何事!?
委員長と獄寺何かあったのか?
忘れてはいけない、此処は校門前。
生徒も溜まってきている。
注目の的。
突然の獄寺の異変も気にかかり此処では好機の目に晒されるだけで話は進行しないと確信した雲雀は獄寺の腕を掴み応接室へと連行したのであった。
腕を掴まれた瞬間の獄寺はそれは嬉しそうにとろけそうな表情をしていたのを校門に集まっていた面々は見てしまったが、すぐに記憶から抹消する事にした。
何せあの二人のやり取りに関わって惨事にならない方が珍しいのだから。