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□シャッターチャンスはone&only
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「至希。父さんが写真が好きなのは知っているな?」
「変態的なアルバムを作る程度には好きだって知ってる」
「そう、そのアルバム。あれには最低でも一ヶ月に一枚のペースで新しく追加していた。なのに、だ。お前のその超常能力のせいで、ここ二ヶ月も滞っている」
「うるさい黙れいっそ燃やせあんなもん」
「至希。赤外線カメラは、解像度がいまいちだから手を出したくないんだ」
「サラッと気持ち悪いこと言うな!」
「固定カメラはアングルが決まらないし」
「さっきから堂々と盗撮宣言するなよ!」
「寝顔ばかりでも面白みに欠ける」
「一服盛るつもりか!? どんどん犯罪色が濃くなっていることに気付いてくれ!」
「合成は……美学に反する」
「もういいよいっそ合成で満足しろ!」
どこまでも真剣な蓮とは裏腹に、だんだん泣きそうになってきた至希である。
いつもなら、蓮のこういった異常───もとい、過剰な愛情攻撃はキョーコに向けられることが多い。
至希にもたしかに降り注ぐが、はいはいと受け流すことが可能なレベルだった。
しかし、写真を拒み続けて来た反動なのか、今日の攻撃は重く鋭い。
精神の深いところまでも傷つけられてしまいそうだ。
「───よし。なら至希、こうしよう」
「……何」
「約束する。プリントした写真はどこにも渡さない、誰にも見せない。家からも持ち出さない。それでどうだ」
「…………」
悪くない、と思ってしまった。
写真は嫌いだ、大嫌いになった。しかしそうなった原因が二ヶ月前のあの事件であり、それを二度としないと約束してもらえるなら、家族内で撮るくらいは構わないのではないだろうか。
「……絶対に家から出さないか」
「出さない」
「誰にも渡さないな?」
「約束する」
「………………じゃあいい」
悩んで悩んで、結局こくんと頷いた至希。
そんな息子に蓮は晴れ渡った笑顔でカメラを向けた。
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