スキップ・ビート!
□ロイヤル・クリスマス!
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こんなで迎えた24日、朝起きて真っ先に蓮がしたことは家族への電話だ。
しかしいくらコールしても誰も出ない。キョーコの携帯も至希の携帯も繋がらない。
不安になり、様子を見てきてもらおうと妻の親友に電話をしても出ない。
最後の手段だと社長に電話をしたら、出はしなかったが留守電につながり───
『ロイヤル・クリスマス会を開催中だ!』
そんな、留守電になっていないメッセージが再生された。
「……」
分かった気がした。
誰もいないのも。電話にすら出ないのも。
きっと、外界から切り離されたおかしな世界にいるのだ。
自分はこんなところで、共演女優のミスの煽りを食らっているわけだが。
寒い中、ダークカラーのスーツでビシッときめて、待ちぼうけしていたわけだが。
家族とクリスマスを過ごすために、それはもう頑張ってきたというのに、パーになったわけだが。
おそらく社長も、予定を狂わされてしまったキョーコたちのためを思って誘ったんだろうが。
「…………」
この、腹の底から湧き上がってくるようなどす黒い感情は、どう晴らせばいいのだろう。
部屋でおとなしく夜になるのを待っていることができず、帰り支度を調え次第チェックアウトし、そのまま衣装に着替え、現場に出て待機している蓮。
連絡はまだないが、おそらく共演女優も来ているはず。
日が沈み、シーンに違和感のない程度に暗くなったら即座に撮影を開始し、その足で帰れるようにとの構えである。
そんな蓮の横で胃を痛くしていた社のもとに、近くのレストランに来てくれとスタッフからの連絡が入った。
時刻は夕方近く。ひょっとしたら、共演女優がまだ来ないので先に夕食を、ということだろうか。
「蓮、行こう。いくら何でも冷えただろ」
「……食事する気分じゃないんですが」
「食わなくてもいいから、屋根の下に行くぞ。大丈夫、あそこのレストランだから、すぐにここに来れるから」
「ですが、」
「風邪でもひいたら、せっかく会えてもことちゃん抱けないぞ」
「さあ行きましょう社さん」
「……可愛いやつだよな、お前って」