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□『あいつバトン!』
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「蓮、ちょっとこれやっといてくれ」

 ロケ先へ移動する新幹線の中で、社が一枚の紙とボールペンを渡してくる。

「何ですか、これ? ……『あいつバトン』?
 このバトンではあなたにバトンを回してきた人を「あいつ」とします。あなたが思うあいつの印象etc……正直にお答えください。
 ……あいつ?」

 趣旨は分かった。けれど意図が分からない。
 説明を求めてマネージャーを見ると、彼もよく分かっていなさそうな顔で微苦笑している。

「社長の思いつきらしいよ」

「ああ、なるほど……。じゃあこれに答えて、社長に返せばいいんですか?」

「そういうことなんじゃないか? 俺にも回って来てるんだよ」

「御愁傷様です」

「あ、ちなみにこの紙、七夕の笹に飾る予定らしいから」

「……つくづくあの人らしいですね」



▼あいつの名前を教えて下さい。

「『ローリィ宝田』、と」

▼ぶっちゃけどういう関係?

「『事務所の社長と俳優』、かな。社さんは何て書きました?」

「ほぼ同じ。『事務所の社長としがないマネージャー』だよ」

「しがないって……」


▼あいつを色で例えると?

「色……。こう……ど派手な。何と表現するべきか……」

「俺は『南国の真夏色』って書いた」

「それ頂きます」


▼あいつを四字熟語で例えると?

「四字熟語? …………(分からない)」

「悩むよなぁ。俺、『豪華絢爛』か『有言実行』にしようかと思ってるんだけど」

「……どっちか下さい」


▼ あいつの良い所を一つ教えて。

「『仕事に誠実なところ』で、……いいか」

「愛やら趣味やらに走るのは、褒められないもんな。過ぎたるは尚ってのは、よく言ったもんだ」


▼あいつに歌わせたい歌は?

「歌? ……『愛の讃歌』とか」

「微妙に古ッ!」

「タイトルだけで決めたんですけどね」


▼遊びに行くなら?

「遊び……。前に別荘に連れて行かれたな、そう言えば」

「あー、あの、象が庭にいたってやつか?」

「ええ。噂ではペンギンがいる別荘もあるそうです」


▼この場を借りてあいつに言ってやりたい事があれば。

「……『いつもありがとうございます』、と」

「心なしか沈黙が落ちたよな、今」

「気のせいです。社さんこそ、『いつもお疲れ様です』、字が震えてますよ」


▼あなたについて答えさせたい次の回答者5人

「社長のことだから、社内中に配ってるんでしょうね」

「いや、なんか、黒崎監督とか、外部にも配ったらしいよ、ラブミー部が」

「……」

「他の皆の回答、読んでみたいもんだな」

「笹もさぞかし大きいんでしょうね……」



 
 記入の終わった用紙を社が鞄に仕舞い込む。
 あとでファックスで会社に送るらしい。


 それに『愛の深さ度』やら『理解度』やら『ユーモア度』やら、ワケの分からないローリィ基準の採点が入り、その結果がまた新たな騒動を引き起こすことになるのだが……

 それはまた、別の話である。



End





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七夕に無理やりかこつけた。苦しい……(笑)。
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