スキップ・ビート!
□1・2・shoot!
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「……、プリンスじゃん」
「プリンス言うな! 至希だ!」
「いやほら、王子と書いてプリ」
「トラウマ刺激すんなー!」
「バカ呼ばわりすっからだ」
「…………」
なんて大人げない大人なんだ。
「何だよ、キョーコに用事か?」
「……親父のほう」
「げっ、この局にいたのかよ」
会わないでよかった、などと言いながら、尚の視線が至希とガードマンを行き来する。
どうやら現状を把握したようで、軽い足取りで近付いて来た。
「こいつ、マジで関係者だから入れてやったら?」
「はっ、……いえ、しかし」
テレビ局の警備員という職業上、有名人を目にする機会は多くある。
けれど口をきくことなどほとんどないし、ましてや相手はトップシンガーだ。
若干の動揺をにじませつつ、しかし職務は忘れない。
「身分証明ができませんと───」
「できるできる。はい」
軽い口調で請け負い、尚の手が至希に伸び───
きゃあああぁぁぁぁ!!!!!!!
あろうことか、至希の顔から眼鏡を取り去った。
「蓮−!?」
「ウソ、そっくりじゃん!」
「え、え、子供!? 蓮と京子の!?」
響き渡る黄色い声。
にじり寄ってくる気配。
カシャカシャ鳴り響くシャッター音。
「何してくれてんだアンタ!?」
眼鏡を取られた瞬間に腕で顔を隠したので、まあ写真には撮られていないと思う。
しかし見られてしまったことで、ファンたちが襲いかかってくる。
尚を盾にしてやろうかと思ったら、じつに素早い動きで戦線離脱していた(ちなみに眼鏡は胸ポケットに入っていた)。
覚えてろ、と心の中で唸る。
しかし今すべきことは、ここからの脱出である。
ささっと素早く眼鏡を着用し、伸びてくる腕を振り払いながらガードマンに訴える。
「顔見て分かってくれましたか!? 敦賀至希、敦賀蓮の息子です!」