スキップ・ビート!

□1・2・shoot!
3ページ/5ページ

「……、プリンスじゃん」

「プリンス言うな! 至希だ!」

「いやほら、王子と書いてプリ」

「トラウマ刺激すんなー!」

「バカ呼ばわりすっからだ」

「…………」

 なんて大人げない大人なんだ。

「何だよ、キョーコに用事か?」

「……親父のほう」

「げっ、この局にいたのかよ」

 会わないでよかった、などと言いながら、尚の視線が至希とガードマンを行き来する。
 どうやら現状を把握したようで、軽い足取りで近付いて来た。

「こいつ、マジで関係者だから入れてやったら?」

「はっ、……いえ、しかし」

 テレビ局の警備員という職業上、有名人を目にする機会は多くある。
 けれど口をきくことなどほとんどないし、ましてや相手はトップシンガーだ。
 若干の動揺をにじませつつ、しかし職務は忘れない。

「身分証明ができませんと───」

「できるできる。はい」

 軽い口調で請け負い、尚の手が至希に伸び───


 きゃあああぁぁぁぁ!!!!!!!


 あろうことか、至希の顔から眼鏡を取り去った。


「蓮−!?」

「ウソ、そっくりじゃん!」

「え、え、子供!? 蓮と京子の!?」

 響き渡る黄色い声。
 にじり寄ってくる気配。
 カシャカシャ鳴り響くシャッター音。

「何してくれてんだアンタ!?」

 眼鏡を取られた瞬間に腕で顔を隠したので、まあ写真には撮られていないと思う。
 しかし見られてしまったことで、ファンたちが襲いかかってくる。
 尚を盾にしてやろうかと思ったら、じつに素早い動きで戦線離脱していた(ちなみに眼鏡は胸ポケットに入っていた)。
 覚えてろ、と心の中で唸る。
 しかし今すべきことは、ここからの脱出である。
 ささっと素早く眼鏡を着用し、伸びてくる腕を振り払いながらガードマンに訴える。

「顔見て分かってくれましたか!? 敦賀至希、敦賀蓮の息子です!」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ