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□背中合わせの共犯者
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「……ねえ、敦賀さん」
「ん?」
キョーコが口を開いたのは、星を探しはじめて二十分ほどしてからのこと。
残り時間はまだあるが、雲がまた広がりつつあるので、実質的に没収試合だろう。
「馬鹿なことだったと、思いますか」
「……いや」
何を、とは問わない。
誰も知らない、誰も観ない、二人だけの舞台。
今や日本を代表する名優二人が、何年も拍手一つ響かない舞台に立っていた。
それを誰かが知ることがあれば、勿体ないと嘆くかもしれないし、馬鹿馬鹿しいと笑うかもしれない。
けれど当人たちだけは、それをしない。
「馬鹿なことでも、無駄なことでもなかったよ。ああやって足掻いて足掻いて、逃げ回って、だからこそ俺は受け入れられた」
どんなに逃げても駄目なのだ、と。
結局は捕われてしまっているのだから、と。
受け入れることができたのは、足掻いて逃げ回った経験があるからだ。
「そうですね。否定して、我慢して、見ないふりをして……結局、視線一つで崩された」
こんなに頑張っても駄目なのかと、いっそ清々しい気持ちで受け入れることができたのは、自分はできる限りのことをしたというおかしな達成感があるからかもしれない。
だからこそ、言える。
躊躇いはない。言葉にも迷わない。
ほんのりと寄せ合った背中越しの体温に安心を覚えれば尚のこと。
「敦賀さん。あなたが好きです」
「最上さん。きみが好きだ」
「ずっとずっと、好きでした」
「ずっとずっと、愛してた」
「誰かを好きになんかならないって、決めてたけど」
「大切な存在は作らないと、誓っていたけど」
「「それでも、駄目だった」」