スキップ・ビート!
□背中合わせの共犯者
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「雲が晴れてきましたね」
「このあたりはまだ暗いから、星が見えるね。流れ星に願掛けでもしますか、お嬢さん?」
暗いとはいえ都心のことだ。
星を探すのもやっとの空で、流れ星を見つけることはほぼ不可能だろう。
からかう色の濃かった蓮の言葉だが、意外にもキョーコはあっさり頷いた。
「じゃあ競争しましょう。どっちが先に流れ星を見つけられるか」
「競争?」
「流れ星が叶えてくれそうな願いは、今の私にはありませんから。敦賀さんもそうでしょう?」
言いながら、華奢な造りのミュールをポンと脱ぎ捨てるキョーコ。
そのまま横向きに座り、膝を立てて空を見上げる体勢になる。
「最上さん?」
「同じ方向の空を見てても、勝負になりません。私はあっちの東の空を見ますから、敦賀さんは反対です」
「それだと、それぞれ自己申告になるよ?」
「もちろん嘘アリです。相手を騙せるような演技ができたら、それはそれで勝ち」
「なるほど? じゃあ、勝負の前に聞いておこうかな。勝者にはどんなご褒美があるんだい?」
くすくすと笑いを含みながら、蓮も身体を横に向ける。
キョーコとは反対の空を見上げる体勢は、自然と互いの背中を寄せ合った。
「流れ星の代わりに、相手に願いを叶えてもらう。というのは?」
「───いいね」
キョーコは言った。「流れ星が叶えてくれそうな願いは、今の私にはない」と。「敦賀さんもそうでしょう」と。
それは、互いの願いを承知しての言葉。
互いにしか叶えられない願いがあるということを、そしてそれが同じ内容であるだろうことを、理解してのこの勝負。
「制限時間は?」
「今から一時間、で」
人気のない、夜の公園。
外灯のわずかな光が頼りのベンチの上。
まだ少し肌寒い空気の中、ほんのりと背中合わせに体温を分け合って、蓮とキョーコは星を探した。