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□チャリティーweek!
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 それでも彼はプロだった。
 京子の暴露話に笑顔で応じ、同名の少年の言葉に笑顔で頷き、盛り上がるスタッフたちに笑顔で突っ込みを入れ───
 その仕事ぶりは、キョーコが「なかなかやるわね……バカショーのわりに……」と、洩らしたほどだった。

 涙ぐましい努力が実を結び、そろそろ電話を切れるかなー、といった雰囲気になったとき、いきなり鳴り響いた軽快なメロディ。

 ピロリロリン♪ ピロリロリン♪ ピロリロリロリロリン♪

「あ? ……何の音だ?」

 何だか、景品が当たったような感じの音である。
 答えは正面の幼馴染みがくれた。

「おめでとう〜! 『京子の携帯メモリ』に当選〜♪」

『え? 何ですか、それ?』

「あなたが好きな数字を選んで、それに対応する私の携帯電話のメモリ番号の人をこの場に呼んじゃおうって企画。『え!? 京子とこの人が友達!? 意外な一面だ!』って思わせるのが狙いだそうよ」

 なんてアホな企画だろう。と、尚は思った。
 まあ、根本の企画からしてアホだけども。

「何番にする?」

『えぇと……じゃあ、15歳なので、15番で!』

「15番ね」

 プルルルル プルルルル───

『はい、もしもし』

「「「「「ッッッッッ!?」」」」」

 スピーカーと接続した京子の携帯電話。メモリ15番のお相手は、声だけで誰もがその正体を看破するほどに有名な、それはそれは麗しい声の持ち主で。

 スタジオ中から歓声が上がる(特に女性)。
 電話の向こうの少年も、自分が選んでしまった人物の大物っぷりに絶句している気配だ。

 よりにもよって、敦賀蓮かよ……!

「こんにちは、敦賀さん。『京子の携帯メモリ』です」

『ああ、あれか。お疲れ様。たしか、俺がその場に行くんだよね?』

「ええ。でも遠方にいらっしゃる場合は、この電話だけですけど。私は今、チャリティー本部の第7スタジオなんですが、敦賀さんは今どちらですか?」

 そうだ! たしかあいつは、『郷土料理を求めて』とかいうドサ回りをやらされてたはず!
 地方を巡ってるんだから、ここには来ないだろう。

 よし、まだ天は俺を見捨ててはいなかった……。

『ちょうど、本部に戻ってきたとこ。すぐに行くよ』

「そうなんですか? 偶然ですね。じゃあお待ちしてま〜す。……不破さん、今から敦賀さんいらっしゃるそうです」

「…………」

 尚は思った。
 心から確信した。

 神は死んだ……と。

「……メモリ、15番……?」

「ええ。自動登録ですから、誰が何番なのか、自分でも把握できてないんですけどね。
 敦賀さんが当たったわけだけど、どうかしら? 男の子だから、女優さんとかが良かった?」

 前半は尚に、後半は電話の向こうの少年に。
 敦賀蓮だと分かった瞬間からフリーズしていた少年は、京子の問い掛けで一気に解凍された。

『大好きです! かっこいいしかっこいいし! ホントに、冗談じゃなく、日本でいちばんカッコイイと思ってるし!』

「本当に? 男の子にもこんなに絶賛されるなんて、さすが敦賀さん」

『でも、驚きました……何となく、敦賀さんは1番だと思ってたから』

「どうして?」

『え、だって、京子さんたち恋人なんでしょ?』

「「「「「ッッッッ!!」」」」」

 大スターの到来をウキウキと待ちわびていたスタジオに、一気に緊張が走る。
 空気が言葉を操れるとすれば、「言っちまったー!!」というところだ。
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