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□『もう帰りません。』
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「モー子さぁぁぁぁん! とうとう! とうとう、モー子さんが世界一の美女って認められたわぁぁぁvvv」
部屋で妹姫とお茶を飲んでいた姉姫様に飛びつこうとダイビング!
「……はぁ」
けれど姉姫様───モー子さんはさらりとそれを躱します。勢い余った女王様は妹姫様に抱きつく結果となり、妹姫様はそれをとても嬉しそうに受け止めました。
「きゃー! ご、ごめんなさいマリアちゃん! モー子さん、何でよけるの〜!?」
「女王様。何度も申し上げますが、私の名前は白雪です。モー子ではありません」
「むぅ。いいじゃない、親愛の情を込めた証なんだから♪ それより、おめでとう、モー子さん。世界一の美女よvv」
それは素晴らしいことに違いありません。妹姫のマリアも、キラキラとした笑みを浮かべます。
けれど、モー子……もとい、白雪姫は知っていました。
「毎月のように鏡を呪い殺す勢いで『モー子さんとおっしゃい〜』ってやってた結果でしょう」
図星です。
「でも、でも〜!」
ぐずぐずと泣き始めた、魔女にして女王たる人を、白雪姫は冷ややかに見つめます。
そして、表情とは裏腹に、熱く決心しました。
(こんな家、出ていってやる……!)
白雪姫は、有言実行の人でした。
早くも二週間後、決意のままに城から飛び出したのです。
「ありがとう、黒崎さん。あなたの手助けのおかげで、危なげなく脱出できたわ」
一人での脱出は、不可能ではありませんが危険を伴います。
賢い白雪姫は、城に獲物をおさめるためにやってくる狩人の黒崎さんに目を付けました。
彼は獲物と一緒に野菜などを運び入れる仕事をしているので、馬車での出入りを認められているからです。
最初はお金で頼もうと思いましたが、黒崎さんはなぜか無償で協力を約束してくれました。
その上、脱出だけでなく、遠くの森まで送ってくれたのです。
なんともありがたいことに、その森は魔法の力が届かない土地だと言うではありませんか。
足取りも軽く、白雪姫は新生活に踏み出していきました。