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□条件はただ3つ。
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「じゃあモー子さん、またねー。メールするから!」

「はいはい、さっさと行きなさい。敦賀さん待ってるわよ」

 そんなやり取りを五回ほど繰り返し、やっとキョーコは蓮の待つ車に乗って去って行った。

 時刻は既に夕方と呼ばれる時間帯に差し掛かっている。
 半日以上Wデートとなってしまったのだが、キョーコは夕飯まで一緒にいたがったので、ここで別れられて幸運だったと思うべきかもしれない。
 蓮も、今夜はキョーコちゃんがお泊まりだとかで、あまり熱心に引き離そうとはしなかったのだ。

「ったく、自分は余裕があるからって……」

 社は、キョーコが嫌いなわけでは決してない。むしろ妹のようで好ましいし、担当俳優の恋人としても感謝している。
 しかし、恋人の親友としては時々悩まされてしまう。何に悩むかと言って、キョーコはもちろん奏江までもが、二人きりでなくても構わなそうなあたりだ。

「はぁ。まったくあの子も、しょうがないわね」

 などとため息混じりに言いつつも、その視線は車が去った方向を追っている。

「じゃあ倖一さん、行きましょうか。車、あっちの駐車場に停めてあるから」

 四人でいるのは楽しい。けれど、たまのデートだ。こんなときくらい出来る限り二人の時間を大切にしたいと思うのは、自分だけなのだろうか?

「倖一さん?」

 思考に没頭していた社は、奏江からの呼び掛けに、三度目でやっと気付いた。

「倖一さん!」

「っえ? あ、ごめん、」

「もう……」

「ほんとごめん、ちょっと考え事してて……。何か言った?」

「別に……」

 ほんの少し不機嫌そうに唇を引き絞る表情は、大人びた顔立ちを少しだけ幼く見せる。
 可愛らしいので好きな顔なのだが、この表情のときは怒っている証だから、心中複雑だ。

「……倖一さんは、四人の方がいいのね」

「え? え!? ちょっ、奏江さん!?」

「車、あっちです!」

 今、何と言った? 「四人の方がいいのね」と言ったのか?

「奏江さん!」

 誤解だ! と言いたいところなのだが、既に恋人は不機嫌な歩調でもって先へと進んでいる。

 役者としての訓練を受けているだけあって、じつに綺麗な歩行だ。乱暴に歩いているはずなのに少しも頭の位置がぶれない。
 そういうところに目がいくのはマネージャーとしての職業病だろうが、

「綺麗だな〜」

 と、状況も忘れて見惚れるのは、個人的な問題である。

 かくして、立ち姿に見惚れているうちに弁解しないまま車に到着してしまい、結果、何とも居心地の悪い密室に二人は入り込むこととなった。
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