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□mutual watch!後編
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「美味しかったねー、モー子さんvv」
「そうね、味は良かったわ。店の雰囲気はいまいちだったけど」
店を出て、奏江の車が停めてある最寄りの有料駐車場に歩いている二人。
ほくほく笑顔で言うキョーコ、どことなく渋面の奏江。
奏江は、店内がざわざわと落ち着きがなかったことが気に入らないと言う。しかしそれは他の客に二人のことがバレたせいだ。店は悪くない。
キョーコの視線からそんな思いを読み取ったのだろう、奏江が、ややしかめていた顔を緩ませた。
「はぁ。ま、仕方ないわね。今度からはもっとしっかり変装して来ることにするわ。えーと……、あ、あったあった」
「……モー子さん、デジカメなんか出してどうするの?」
「そろそろ車だから」
「??? そうね……着いたけど、車がどうか、!?」
パシャ!
薄暗い駐車場、奏江の車の助手席側に回って鍵が開くのを待とうとしたキョーコは、隣に駐車していた黒いワゴンの後部席から伸びてきた腕に腰を掴まれ、そのまま引き入れられた。
まさに早業、正面で見ていた奏江ですら、キョーコが消えたように見えた。
「神隠しレベルね……」
「あの……琴南さん……? 今の『パシャ!』って……」
「カメラのシャッター音です。ところで、どうして社さんがここに?」
「いや、蓮に、『担保として残って下さい』って言われて……、そもそも何で撮影!?」
「これも担保みたいなものです。もし約束を破って敦賀さんが私とキョーコのオフを邪魔するようなことがあれば、キョーコを引っぱり込んでるこの写真、公表しますから」
もちろんキョーコの顔とかは隠しますけどね? と、さらりと言ってのける奏江に、社は蒼白になる。
彼女は本気だ……!
「じゃあ行きましょうか。社さん、要するにキョーコと入れ替えってことなんでしょう?」
「……はい」
促され、キョーコが乗るはずだった助手席に座る。
ほどなくして発進した車の中には、なぜかノートパソコンがあった。
(こ、怖っ……!)
事態にはいつの間にか、恋路だけではない、芸能生命すらもかかっていたらしい。
───蓮! 頼むから理性を残しておいてくれ……!!