スキップ・ビート!
□mutual watch!前編
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がっくりと膝をついてしまいそうだ。いや、気を抜いたら泣くかもしれない。
なんだか情けなくて仕方がない。泣いたらキョーコはどうするだろうか。
「……」
「ッ!」
チラリと窺う視線を向けてみると、キョーコが小さく身体を震わせた。大きく見開いた瞳にうっすらと涙を浮かせ、唇を噛み締めている。
先に泣かれた……!
何だか敗北感を感じる。
いや、というかそもそも、その顔をやめてくれ! ものすごく儚気で可愛らしく、それでいて扇情的だ。
しかしここで押し倒したら犯罪者だ……。だって『恋人じゃない』んだから。
ああ畜生、こんな展開になるくらいなら、恋人だと認識せざるを得ないような行為にまで発展しとけばよかった。
古風なキョーコに合わせていたつもりの我慢の日々を返せ。
などと、だんだんズレていく思考のなか、それでも蓮は状況を動かそうともしていた。
決して諦めるものかというその姿勢、あっぱれだ。
「分かった。じゃあ改めて言おう」
「……え?」
引きつり気味だった表情を整え、キョーコを正面から見据える。
「最上さん。君が好きだ。俺と、付き合ってください」
「っっっっ、ごめんなさい無理です……!!」
「即答!?」
「無理なものは無理だから無理なんです!!」
「…………」
これでもかというくらい「無理」を連発されて、とうとう蓮はくじけた。
正直なところ、「そりゃないよ」である。
「ごめんなさい!!」
叫んで、キョーコは部屋から走り出ていった。その際、自分が使っていたカップをしっかり流し台に運んでいったあたりが、骨の髄までしみ込んでいる行儀の良さだろう。
追いかけるべきなのかもしれないが……。
「仕切り直しだな……」
何よりも自分のダメージを回復させる必要性を感じる蓮だった───。