スキップ・ビート!
□Love-pierce-Love
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子供など、寂しければ泣く。今ここで何と言おうと、それはそれ、これはこれ。
いっそ清々しいくらいに忘れ去って、泣く。
どう言えばこの葛藤が伝わるものかと苦悩する蓮に、キョーコは可愛らしく笑いかけた。
「いいじゃない。そういうのも経験よ」
「……〜〜〜っ」
普段は甘すぎるくらいのくせに、何だこの肝っ玉母さんっぷりは!
ああ惚れ直す!
しかし父親としてはやはり!
「まだこんな小さいんだし、遠足なんてわざわざ……」
「ちょっと」
蓮の言葉尻を奪い、キョーコがキッと顔を上げる。
「遠足なんて?」
「え……」
「どうして『なんて』なんて言うの」
「…………」
しまった。そうだった。色々あって楽しい子供時代を送らなかったこの妻は、その手の話題に敏感なんだった。
マズイ。マズイ。
数秒の思考。芸能界トップの座で培った判断力は、たったそれだけの時間で結論を打ち出す。
発光しそうなほどの笑みを浮かばせ、腕の中の息子に言った。
「じゃあそろそろ寝ような、至希。今日はお父さんが絵本を読んでやろうか」
「ほんと!? よんで、よんで!」
「よしよし、じゃあ行こう」
ほのぼのした会話を続けながら子供部屋へ向かい───戦線離脱、成功。
その後、宣言どおり絵本を読み聞かせてやった蓮は、その途中で子供机の上に置いてある冊子に目をとめた。
それは『お泊まり遠足のしおり』で。
「…………(ニヤリ)」