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□Love-pierce-Love
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「おかえりなさい、おとうさん!」
PM8:00。
分刻みのハードスケジュールをそつなくこなし帰宅した蓮を出迎えたのは、愛息・至希。
ファンシー柄のパジャマを着て、風呂上がりなのだろうか、頬が上気している。
「ただいま至希」
微笑みかけて頭を撫でると、やはり少し湿っている。
キャッキャッと嬉しそうにまとわりついてくる息子を抱き上げリビングに入ると、そこではキョーコが何やら紙を見ながら指折り確認をしていた。
「パジャマも入れた、タオルも入れた、洗面用具は……大丈夫ね、着替えも入れたし。下着は多めに入れた方がいいわね。えーと、ああそうだ、保険証のコピーとらなきゃ……と、あら帰ってたの? ごめんなさい、気付かなかった」
「いや、至希が出迎えてくれたよ。ところで、この荷造りは?」
キョーコが泊まり掛けの仕事に出るとは聞いていない。
至希が生まれてから、遠方での仕事や長期のロケをキョーコはなるべく避けている。
どうしても行かねばならないときは、それはそれは綿密な計画を立て、至希を一人にする時間が少しでも減るよう、蓮と相談するのだ。
訝し気に首を傾げる蓮に答えたのは、キョーコではなく腕に抱いた至希だった。
「あのね、おとまりえんそくなんだよ!」
「え?」
幼児のひらがな発音に聞き返すと、今度はキョーコが説明してくれた。
「お泊まり遠足。幼稚園のイベントよ。林間学校みたいなものかしらね。来週末に二泊三日で」
「に、二泊!? ちょ、ちょっとキョーコ……至希はまだ四歳……」
「あら、年少組の子も行くのよ?」
三歳の子が行くのだ。至希は四歳だ。問題ない。
けろりと言うキョーコだが、蓮は承服できなかった。
だって四歳だ。誰が何と言おうと四歳だ。
立派に立派な幼児様だ。親元から離れて二泊三日など!
「至希はまだ家以外で眠ったことがないし……丸一日以上、俺たちから離れたことも」
「先生方がいらっしゃるし、それに至希だってすごく楽しみにしてるもの。
ねー、至希? 楽しみなんだよね?」
「うん! ぼく、あっくんとしーちゃんとおんなじへや!」
「ほら、ね?」
「いや、だけど……」