スキップ・ビート!
□思春期かっ!
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「あ、もが」
「こんにちは敦賀さんお疲れ様ですそれでは失礼しますっっっっ!!」
会社のロビーで遭遇するなり、ズバッと挨拶をまとめて綺麗に一礼し、そのまま早足で去っていくキョーコ。
その後ろ姿をやや呆然と見送りながら、
「うん……いい滑舌だ」
などと、とりあえず先輩らしいことを言ってみる蓮の肩を、『同情』と顔に書いた社がポンと叩いた。
事の起こりは一週間前。
飲み会の席で、日本語(特に流行語や古い言い回し)に若干の不自由さがある蓮が、知らぬこととはいえキョーコに大胆なセクハラを働いた。
手ブラを手ぶらと勘違いし、「最上さんで想像してる」などと口走った挙げ句、こともあろうに「やってみて」などと言ってしまったのだ。
意味を知った後は逃げたキョーコを追い掛け、必死に謝り弁解し、キョーコも「そういうことでしたか」と頷いてくれた。
誤解はとけ、もうわだかまりはないはず、なのに。
なぜかそれ以来、明らかに避けられているのであった。
「来週さ、一緒の仕事あるし、そこでゆっくり話せるかもしれないぞ?」
「来週? 何の仕事ですか?」
「こないだの二時間ドラマのメンバーで、極東フレンズパークに出るって、さっき言っただろ」
「ああ……そうでしたか、すみません」
番宣があるとは記憶していたが、その番組のものだとは覚えていなかった……聞いていなかった、だろうか。
歩きながら話していたのだが、廊下の向こうにキョーコを見つけたときから聞き流していた自信がある。
「そうそう、それでな、ほらこのアンケート、後で書いといてくれ」
「何です? ……欲しいもの、ですか」
「最後に賞品とるためにダーツ投げるだろ」
「ああ、あれですか」
ぐるぐる回る的に賞品が塗り分けられていて、そこにダーツを投げて、当たったところのものをゲットできる。
そういう流れだったような。
「欲しいもの……ねぇ」
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