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□ここが我慢の限界だ!
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「こ……っんの、馬鹿親父がぁぁぁっっっっ!!!!!!」




 敦賀至希。十八歳。高校三年生。


 本日、人生初家出しました。




     *



「というわけで、すみませんがお世話になります」

「いや、至希くん、『というわけで』って言われても……」

 どかんと大きな荷物を玄関に置き、丁寧に一礼してくる至希に困惑の声を上げたのは社だ。

 時刻は22時。よその家に遊びに行くには非常識な時間である。

 破天荒な両親を反面教師としたものか、至希はじつに常識的で堅実な人間だ。
 これは母の教育だろうが、子供らしからぬほどに礼儀正しくもある。
 そんな彼が、約束もなくこんな時間に訪れるなど何事だろう。

「どうしたの至希くん、その大荷物も」

「家を出てきました。この荷物は、当面の着替えと学校で使う道具です」

「ああなるほど、そりゃ大荷物になるなー。って、家出ぇぇ!?」

「はい」

「えええぇぇぇ!? ちょっ、待っ、落ち着いて!!」

「落ち着くのは至希よりあなたでしょ、倖一さん」

 騒ぎを聞き付けたのだろう、パタパタとスリッパを鳴らしながら現れたのは、女優でありキョーコの親友であり社の妻である奏江だ。

「あ、奏江さん、こんばんは。夜分にすみません」

「こんばんは。とりあえず上がったら? 玄関先で大騒ぎしても、近所迷惑よ。お茶でもいれるから、話を聞かせてちょうだい」

「はい。お邪魔します」



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