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□『敦賀至希です。二十歳です。』
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 敦賀至希です。
 二十歳です。

 都内の大学に通っています。二年生です。理系です。

 両親は相変わらず芸能界のトップクラスに君臨しています。

 なので、かじりきれないほどに分厚いスネが四本もあるのですが、だから逆にと言いますか、いつまでも親の世話になるのもどうかと思い、大学進学を機に一人暮らしを始めました。

 バイト三昧、自立の日々、そして半年で出戻りしました。

 何故か? 色々あったからです。

 どこぞの大物俳優や大物タレントがしょっちゅうやって来たり。

 巻き起こる騒動に近隣住民からの苦情が殺到したり。

 両親のファンなのか俺のストーカーなのか、よく分からない人も出てきたり。

 平穏な時間などありませんでした。

 とは言っても、それらには耐えました。両親に悪気がないのは分かっていたし、想定の範囲内でしたから。

 出戻りを決意した───させられた最大の要因は、17歳離れた妹でした。

 当時まだ2歳。2歳だったのに。

 電車で40分かかる距離を単独踏破しやがりました。

 意味が分かりません。

 ドアを叩く音がしたので開けてみたら、ちまっとしたのがいたときの驚愕。
 寿命が5年は縮みました、いやマジで。

 まだろくに口もきけない無一文の幼児が、どうやって来たものか。

 父のマネージャー曰く「帰巣本能じゃないかな……」です。

 今回は良かったですが、またこんなことがあったら。
 事故や事件になりでもしたら。

 そんなことを考えると不安は尽きません。

 実は留学の話がきていたので、いっそ海を越えようかとも思ったのですが。

 やめることにしました。

 ホームステイ先のドア、叩かれたら……寿命、尽きかねませんから。

 両親にも妹にも、愛されてるし、愛してますが。

 家より大学の方がホッとするのはどういうことか。

 敦賀至希です。
 二十歳です。



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