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□ロイヤル・クリスマス!
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「…………」

「れんー? れーんー?」

「……何ですか社さん」

「お前の気持ちは分かるよ分かるけど分かるから! だから、その顔は〜」

「満面の笑みを浮かべていますが」

「キョーコちゃんの台詞を借りるなら、大魔王のな! ……ってしまった!」

「キョ、…………」

「あああ蓮っ、NGワード言ってごめん! 落ち着け!」

「こと……至希……」

「落ち着け! 仕事、仕事、仕事!」

「帰ります」

「頼むから落ち着いてぇぇぇ!」


 日本有数の俳優とされている敦賀蓮のスケジュールは多忙極まりない。
 芝居の仕事だけでなく、最近ではバラエティやトーク番組にも多く出ている(全国ネットで家族自慢できることに気付いたから)。
 しかし今年の彼は一味違った。
 何が何でも絶対に、と、12月24日の夜と25日のスケジュールを空けたのだ。
 愛しい妻と今年生まれた娘と、真っ白なケーキを囲むのだ!(息子は年頃だから、デートでも友人とのクリスマス会でも出掛けるだろう。むしろ出掛ければいい。娘はなぜか兄が大好きで、父親である自分が抱っこしていても兄に手を伸ばしてしまうのだから!)

 そのために前後のスケジュールは過密にもほどがあるだろうというほど酷いものだったが、蓮は満足だった。
 12月も半ばに入った頃からろくに帰宅できなくても、泊まりのロケが目白押しでも、彼は満足だった……だったのに。

 そして迎えた23日。これが終わればオフだという最後の遠方ロケに、共演する大物女優が遅刻してきたのだ。いや、遅刻だけならまだしも、飛行機に乗れなかったとかで翌日に到着だという。
 
 しかも、撮る予定のシーンは夜の室外なので、必然的に24日の夜はつぶれることになる。
 なおかつ、終わってすぐに帰ろうにも、飛行機の関係上25日に食い込むことは確実だ。

 その知らせを聞いたときの蓮の顔ときたら、筆舌に尽くしがたいものがあったと社は振り返る。
 何しろ、小さな、誰にも聞こえないような声でとはいえ、「飛べないんなら泳いでこいよ……」と洩らしたほどだ。
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