スキップ・ビート!

□ペンは剣よりも強し!
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 ピーンポーン───


 どことなく間延びした呼び鈴の音に対する反応は、インターフォンによる応答ではなく、中からにゅっと伸びてきた腕での抱擁だった。

「っきゃあぁぁぁ! 何するんですかっ敦賀先生っ!」

「おかえり、キョーコ」

「離してくださいっ! もうっ!」

 がっちり巻き付いている長い腕を無理やり引きはがし、素早く距離を置く。

「いいかげんにしてください! 毎回毎回飽きもせずッ!」

 真っ赤な顔で睨み付け細い肩を怒らせて言うキョーコだが、それを受ける当の本人はニコニコ笑いながら再び腕を伸ばしてくる。

「飽きるわけないじゃないか。行ってきますのキスとただいまのキスはきちんとしないと」

「ここは私の家じゃありません!! 私にとっては仕事場です! ですから、挨拶は『おかえり』じゃなくて『いらっしゃい』です!」

「おや、そうだった? 俺の家ならキョーコの家だと思ってたよ」

「〜〜〜ッッ!! 原稿は出来てるんでしょうね、敦賀先生ッ!!」




 敦賀蓮。

 出す本はそのほとんどがベストセラーという人気漫画家である。
 ノンフィクションを活動の主とし、鋭い舌鋒で社会に問題提起を続けるカリスマ作家であるが、その素顔は驚くほど知られていない。
 どんな賞を受けても受賞の場には代理人しか現れず、顔写真はもちろんのこと、プロフィールの一切が極秘扱い。
 対談などの仕事を受けることもなく、彼の言葉は本の中でしか語られない。
 彼に関して様々な憶測がされているが、その内実を知る者は数少なく、契約している出版社の編集部ですら謎の人扱いだ。
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