スキップ・ビート!

□背中合わせの共犯者
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 自分でもまだ馴染まない住所を携帯に打ち込む作業は、思いのほか難航した。
 震える指は入力をミスし続けるし、まとまらない思考は短い地名すらも思い出せない。
 何より、未だ決心がつかなくて。
 諦めたのに、進めなくて。


『A公園で飲みましょう』


 結局、携帯から送り出されたのは、そんな短いメール。


     *


「こんばんは、最上さん」

「こんばんは、敦賀さん。お呼び立てして申し訳ありません」

「いや。きみが呼んでくれるなら、いつだって喜んで応じるよ」

 ふわりと微笑んで、蓮はキョーコの横に腰掛ける。
 風に揺られてカサリと音を立てるのは、それぞれ持ってきたビニール袋だ。

「はい、どうぞ。口に合えばいいんだけど」

「ありがとうございます。敦賀さんも、どうぞ。あ、車は大丈夫ですか?」

「ありがとう。車はそこの駐車場に停めてきた」

 互いに渡し合う物は、コンビニで購入してきた酒類だ。
 キョーコは蓮に渡すための洋酒を、蓮はキョーコが好みそうな甘口の果実酒を。
 自分ではなく、相手の物だけを買ってきた二人。
 示し合わせたわけではない。自然とそろった。そして、そうなったことを当たり前のように受け入れる。

「ふふっ。天下の『敦賀蓮』に、公園でコンビニのお酒を飲ませるなんて、恐れ多いですよね?」

「それを言うかな、ここで。そんなこと言い出したら、『敦賀蓮』は、女性に深夜の公園で酒を飲ませる男ってことになるよ?」

 軽口を叩き合いながら、目は合わせない。
 中身のない会話を交わしながら、ぼんやりと夜風を受ける。
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