スキップ・ビート!
□今日も明日も。
1ページ/4ページ
『七夕の日……仕事が入ってしまったんです』
真夜中に掛かって来た恋人からの電話。
残念です、と努めておどけた物言いながら、すまなそうに悔しそうに詫びてくる。
「そうか。いいよ、残念だけど、仕方ない。気にしないで。来年もあるんだし」
『……はい。ごめんなさい。せっかく敦賀さんが無理してお休みを取って下さったのに』
「キョーコ。二人のときは?」
『本当にごめんなさい……蓮さん』
*
七夕の夜は一緒に過ごそう、と言い出したのは蓮だった。
東京の空じゃあ天の川は見られないけど、代わりにマンションから夜景を見よう、と。
けれど、そもそもそんなことを思い付いたのは、やはり恋人のメルヘン好きがきっかけで。
まだ『天の川』と呼べるほどの星空を見たことがないのだと、彦星と織姫の逢瀬を見届けてあげられたことがないのだと、キョーコが洩らしたのだ。
本当はどこか観測スポットにでも連れて行ってあげたいところだが、生憎と忙しい身で、綺麗な星空を見に行くほどの余裕はない。
ならばせめて、と提案したデートの約束だった。
社に頼んで、七夕の夜だけは仕事を入れなかった。イベント事なだけあってオファーも多かったが、それら全て断って、ローリィ宝田主催の七夕パーティーも最初の顔見せだけで許してもらえるよう頼み込んで、ようやく実現できそうに思えた七夕デート。
しかしそれがいよいよ三日後、ということになった夜、キョーコから電話か掛かってきたのだ。
『七夕の日に、仕事が入ってしまった』と。
とにかく礼儀に厳しい彼女にしては珍しく深夜のコール。何かあったのかと心配して出てみれば、予想外のデートのキャンセルだった。
仕事が軌道に乗ってきているとは言え、やはりまだまだ新人の域を出ない京子。
七夕の夜だけは空くように調整してもらっていたのだが、飛び入りの仕事だと言う。個人的な都合で仕事を断ることなどできないのは道理だ。