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□北の大地にロマンを求め。
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「至希、ねえ至希♪ お母さん、ガイドブック買って来ちゃった♪」
ウキウキした調子で手に持っているたくさんの雑誌を見せびらかしてくる母親に、風呂上がりの至希は脱力する。
「これ全部、北海道の本なのよ!」
「全部、ってさぁ……」
その数と言ったら、「ずいぶん大きなトランプですね、ババ抜きですか?」レベル。
「母さん……」
「ほらほら、見て見てvv 至希はどこに行くの? 教えて?」
小首を傾げた『おねだりポーズ』に、呆れていた至希の顔は諦めの色に染まる。
「……はぁ」
何だかんだ言っても、自分は母が好きなのだ。それはもう大好きなのだ。
認めたくはないが、それに関しては父と張り合えると思ってるほどだ。
(ちょうど親父、ロケで今夜はいないし……)
誘われるまま、至希はキョーコの隣に腰を下ろした。
「修学旅行で北海道なんてステキね。お母さん、仕事でしか北海道に行ったことないから羨ましいわ」
「家族旅行、ほとんど海外だしな」
有名すぎる一家は、国内でのプライベートは難しい。海外に行った方がまだしも注目度が低いので、家族でどこかに行くのは大抵が海外なのだ。
広いリビングの大きなソファーに隣り合って座り、母が買って来たというガイドブックを使って修学旅行の旅程を説明する至希。
久し振りの幸せを満喫しつつ、母にみやげの希望を聞く。
どちらかと言うと学校行事などには淡白な至希だが、母の楽しそうな顔を見ていると「楽しんで来よう」と思う。
母が「買って来てvv」と言った物はもちろん、「これ可愛い♪」レベルの独り言さえ記憶し、洩れなく購入してこようと決意する。
そうして数週間後、彼は空を飛んだ。