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□『もう帰りません。』
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雪よりも白い肌、血よりも赤い唇、そして濡れたように輝く漆黒の長い髪───
その少女の名を、白雪姫といいました。
その国は、とても平和でした。
賢く優しい王様がいらっしゃり、国民は何の不安もない毎日を過ごしていました。
けれどある日突然、王様が死んでしまいました。
国民は嘆き悲しみ、そして不安に思いました。
お妃様は、何年も前に亡くなってしまっていましたので、まだ若い姉姫様と、幼い妹姫様だけが残されてしまったからです。
そんなとき、一人の魔女が国を訪れました。
長い長い金色の髪が輝くばかりに美しい魔女でした。
魔女は、悲しみと不安に満ちたその国の隙をつき、あっという間に女王となってしまったのです…………。
それから、一ヶ月後。
「鏡よ鏡、教えておくれ。世界で一番美しいのはだぁれ?」
『それは女王様、あなたです』
「……そう」
さらに一ヶ月後。
「鏡よ鏡、教えておくれ。世界で一番美しいのはだぁれ?」
『それは女王様、あなたです』
「……そう」
そのやり取りは、毎月欠かさず繰り返されました。
いつでも答えは同じで、女王様は世界で一番美しいままでした。
けれど、女王様が城に来てちょうど一年目。
鏡は答えを変えました。
『世界で一番美しい人は、この国の姉姫様です』
「まあ……!」
それを聞き、女王様は顔を真っ赤にして震えました。
今までずっと、ずっと自分が一番の美人だったのです。それが今日、初めて覆されたのです。
女王様は我慢できずに駆け出しました。ドレスの裾をからげ、甲高い足音が立つのも構わず、まっすぐに姉姫様のお部屋に飛び込みます。