スキップ・ビート!
□条件はただ3つ。
1ページ/5ページ
その日、敦賀蓮は久し振りにオフだった。
従って、マネージャーである社も必然的にオフだった。
なんとも嬉しい偶然なことに、新鋭女優として売り出し中の恋人もオフだった。
これはもうデートしかないだろう!
服装・髪形・眼鏡、オールOK! 持ち物チェック、忘れ物なし! 完璧だ!
ということで、ついこの間、仕事仲間から教えてもらったばかりの穴場デートスポットにやってきたわけなのだが───
「モー子さーん!」
「え? あら、キョーコ」
「やっぱりモー子さん! こんなところで会えるなんて〜vvv」
「ちょっ、抱きつかないでよ恥ずかしいわね!」
きゃいきゃいと華やかに女性陣が戯れている一方、男性陣は微妙な空気をかもし出していた。
「どうも……社さん」
「ああ、奇遇だな……蓮」
それぞれのデート中に出くわす。
偶然であってもどことなく恥ずかしい事態だが、今日に限っては偶然とは言い切れない。
社がデートスポットを教わっているとき、蓮も隣にいたのだから。
「興味なさそうな顔して台本読んでたのに……ちゃっかり聞いてたんだな」
「社さんこそ……『春に出かけたら気持ち良さそうな感じですね』とか言っておきながら……今は秋ですよ?」
お互い、別に責め合っているわけではない。気まずいだけである。
「キョーコちゃん、一緒に昼食を、とか言い出すぞ?」
ため息を吐きつつ社が言えば、仕方がないとばかりに蓮が肩をすくめる。
「まあ、幸い今日は一日オフです。昼食後に何とか別行動に持ち込みましょう」
「……だな」
彼女らの仲の良さはよぉく知っている。彼氏への愛情と比較しても、まったく遜色ないほど輝かしい友情である。
「はぁ……先が思いやられる……」
社倖一。彼に仕事にオフはあっても、苦労人のオフはない。