スキップ・ビート!
□mutual watch!後編
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これはいったい、何事だろう。
我が身に起きたことが信じられず、キョーコは目の前でニコニコ笑っている人物を凝視する。
「………………(滝汗)」
「………………(極上スマイル)」
沈黙に、頭が痛くなってきた。
幻かもしれない。
不意に、煙のように消えてくれるのではなかろうか。
そんな思いを込めてまばたきもせずに見つめていたら、チュッと軽い音を立てて唇をついばまれた。
「〜〜〜〜ッッッ!!??」
呆けていた意識が音速で覚醒する。秒速300mを越える回転数は、瞬時にこれが現実であると判断した。
「っっき、んっ」
以前キョーコはとある本で、『悲鳴とは助けを求める行為』だと読んだことがある。
恐怖とか驚きとか、そういったものによって引き起こされるものではなく、それらを感じた瞬間に助けを求める感情が発生し、そのときに悲鳴が上がる、らしい。そういう説があるようだ、たしか。
キョーコは助けを求めた。
もう、誰でもいい。お巡りさんでもいい。いやいや、正義の味方だなんて贅沢は言わない。
いっそ、バイキン○ンでも構わない!
そんな切実な思いで発せられた悲鳴は、無情にも空気を震わせることなく、眼前の人物に飲み込まれて消えた。
抵抗を思い付く隙すら与えない速さで、状況を忘れさせられる深みまで奪われる。
「〜〜っっ」
否応無しに浮いていく意識の端で、それでもキョーコは絶叫していた。
だから! この状況はなんなのよ!?