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□mutual watch!前編
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「最上さん」

「はい? あ、お茶のおかわりですか?」

 どうぞ、と伸ばされた手。それに、カップではなく小箱を置いて。

「………敦賀さん?」

「俺と」

「……?」

「結婚しよう」

 キョーコの手の上にある小箱の蓋を上げる。
 台座に収まっている指輪。透明な石が明かりに反射して七色に光る。

「………………」

「返事は、今すぐじゃなくていい。待ってるから」

「……あの……」

「ん?」

「これは……つまり……プロポーズというもの、なんでしょうか……」

 呆然とした視線を、蓮と指輪の間に彷徨わせるキョーコ。
 顔色はやや青ざめていて、そんなに驚かせるようなことを言ったかな、と蓮は内心で首を傾げる。

 付き合い出して二年。そろそろいいかな、いいよな、我慢きかないぞ、というタイミングでのプロポーズだ。

 指輪も吟味して良品を選んだし(「自分で行かないでくれ!」と社に泣かれたが、色々な店を渡り歩いて選んだ)、シチュエーションも悪くない。
 蓮のマンション、やや落とした光量の室内から夜景を眺め、ゆったりと紅茶を味わっている、という……甘やかな時間。

「れっきとしたプロポーズだけど……?」

「な、何でですか!?」

「何でって……君と結婚したいから」

「だ、だ、だってプロポーズって、普通は恋人にするものですよね!?」

「そうだね。だから、君にしてるんだけど……」

 何なのだろう、この会話。
 思い描いていたものと違う気がしてならない蓮は、わずかに眉を寄せる。
 キョーコがムードをぶち壊すのは、まあよくあることだ。だが基本がメルヘン好きな彼女にとって、プロポーズされる瞬間までぶち壊すと言うのはどうもおかしい。

「こ、い、びと?」

「だろう」

「ええ!?」

「『ええ!?』って……」

「私たち、お付き合いなんかしてませんよね!?」

「ええ!?」

「いえ、『ええ!?』って言われても……」

「…………」

「…………」

 二人の間に沈黙が満ちる。
 互いに互いのテンションの違いに戸惑いが隠せない。
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