スキップ・ビート!
□mutual watch!前編
1ページ/4ページ
「最上さん」
「はい? あ、お茶のおかわりですか?」
どうぞ、と伸ばされた手。それに、カップではなく小箱を置いて。
「………敦賀さん?」
「俺と」
「……?」
「結婚しよう」
キョーコの手の上にある小箱の蓋を上げる。
台座に収まっている指輪。透明な石が明かりに反射して七色に光る。
「………………」
「返事は、今すぐじゃなくていい。待ってるから」
「……あの……」
「ん?」
「これは……つまり……プロポーズというもの、なんでしょうか……」
呆然とした視線を、蓮と指輪の間に彷徨わせるキョーコ。
顔色はやや青ざめていて、そんなに驚かせるようなことを言ったかな、と蓮は内心で首を傾げる。
付き合い出して二年。そろそろいいかな、いいよな、我慢きかないぞ、というタイミングでのプロポーズだ。
指輪も吟味して良品を選んだし(「自分で行かないでくれ!」と社に泣かれたが、色々な店を渡り歩いて選んだ)、シチュエーションも悪くない。
蓮のマンション、やや落とした光量の室内から夜景を眺め、ゆったりと紅茶を味わっている、という……甘やかな時間。
「れっきとしたプロポーズだけど……?」
「な、何でですか!?」
「何でって……君と結婚したいから」
「だ、だ、だってプロポーズって、普通は恋人にするものですよね!?」
「そうだね。だから、君にしてるんだけど……」
何なのだろう、この会話。
思い描いていたものと違う気がしてならない蓮は、わずかに眉を寄せる。
キョーコがムードをぶち壊すのは、まあよくあることだ。だが基本がメルヘン好きな彼女にとって、プロポーズされる瞬間までぶち壊すと言うのはどうもおかしい。
「こ、い、びと?」
「だろう」
「ええ!?」
「『ええ!?』って……」
「私たち、お付き合いなんかしてませんよね!?」
「ええ!?」
「いえ、『ええ!?』って言われても……」
「…………」
「…………」
二人の間に沈黙が満ちる。
互いに互いのテンションの違いに戸惑いが隠せない。