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□ここが我慢の限界だ!
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 そうして、「ああ大変だ、壊れてしまったか、じゃあリビングで続き観よう」と、壽を連れ出したのだと言う。

「せっかく……せっかく……!!」

 せっせと小遣いを貯めて買ったゲーム機だ。
 しかも2までと違い、3はメモリ内蔵となっているため、それまでにやったゲームやら何やらのデータがまとめて吹っ飛んだことになる。

 さすがに堪忍袋の緒が切れたと。

 こうも立て続けだと、幾ら何でも我慢の限界だと。

 怒りのために逆に顔色を白くしている至希に、社はもう涙が止まらなかった。

「うん……、うん、至希くん。分かった。よぉく分かったよ。……奏江さん?」

「ええ……客間の用意、してくるわ」

 至希は未成年だ。
 本来であれば、諭し、家に帰るよう説得すべきなのだろうが、社夫婦はそれをしないことにした。


 仏の顔も三度まで、という。

 どんなに温和な人でも、三度も無体を働かれれば怒るのだ。
 なのにこの子は、三度までは許したのだ。仏を超える我慢強さだ。

 これ以上、何を我慢しろと言えるだろう。

「とりあえず、キョーコにだけはメールしとくわよ? うちに泊まらせるってことだけは。いいわね?」

「はい。すみません、よろしくお願いします」



 かくして、至希の家出は始まった。

 翌日に蓮が迎えに来たが顔も見ずに追い返し。

 さらに翌日に蓮がまた来たが、また追い返し。

 三日目にはキョーコが来たが、謝って帰ってもらい。

 四日目に、キョーコからの電話の向こうで、この世の終わりの如く泣きわめく壽に負けて。

 至希の家出は、四日目に幕を下ろした。


 ちなみに、奏江を通して事情を聞いたキョーコは烈火の如く蓮を叱りつけ、至希が帰ってくるまでの四日間、キョーコにも壽にも指一本ふれさせなかったという。

 至希にとってはリフレッシュ期間、蓮にとっては地獄の行軍。

 色々な意味で濃かった四日間は、壽の泣き声によって終息した。

 蓮にキョーコに至希という、一筋縄ではいかない面々を動かす力を持ったそれは、後に、『鶴の一声』ならぬ『敦賀の一泣き』として語り継がれ……る、かも、しれない。






 おしまい。



→後書き


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