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□ここが我慢の限界だ!
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「今日の俺の夕飯は、母が作って行ってくれたハンバーグでした」
ちなみにキョーコ作のハンバーグは、至希の好物のひとつだ。
「ことにお茶を飲ませている俺に、親父が温め直して持って来てくれたんですが、一口食べて吹き出しました」
「え? 熱過ぎたの?」
「いえ。ハンバーグと、乗っている目玉焼きの間に、巧妙に隠されていた大量のわさびのせいで」
「……。父親云々以前に、人として最低ね」
「これだけ手伝ってくれてる息子に、どういう仕打ちだよ蓮……」
おそらく、食事を食べさせることのできる至希への嫉妬なのだろうが、それはひどすぎる。
「とは言っても、せっかくの母の手作りハンバーグです。わさびを取り除いて食べました」
「え!? それも我慢したの!?」
「まあ、さすがにイラッとしてましたけど、」
「け、『けど』?」
「決定打は、その後ですね。宿題のやり直しをするために部屋に戻ったんですが、ことが一緒にいたがったんで、俺の部屋でアニメのDVDを観せていたんです」
リビングでやればいいと蓮は言ったが、どういうわけか、壽は兄の部屋にいると騒がない。
リビングのテレビを観るときはキャアキャア騒いで相手をしろと求めてくるが、至希の部屋にいるときは、おとなしく一人で座っている。
だから、宿題を済ませてしまいたかった至希は、自室を選んだのである。
「宿題といっても二度目ですから。明日の予習を含めても一時間とかからず終わるだろうし、そうすればことを寝かせるのにちょうどいい時間帯になるなと思っていました」
このまま空腹の人に顔を差し出すヒーローに夢中になっててもらおうと、せっせと英訳を進めていたときのことだ。
コンコンとドアがノックされ、蓮がコーヒーを持って入って来た。
「『頑張ってるか至希』とか言って……まあ、俺にコーヒー持って来たような顔をして、ことを構いに来たんだろうなと放っておいたら……!!」
ここにきて初めて、至希が怒りを露にした。
ティーカップをやや乱暴にソーサーに置き、ギリッと歯を食いしばる。
「『てがすべったー』とか! 棒読みで! マジで俳優かよと言いたくなるような棒読みで!!」
ワナワナ震える手で、バン! と机を叩く至希。
「俺の……! 俺のPS3に……アニメ再生してたPS3に……コーヒーぶちまけやがったんです……!!」
「「………………」」
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