愛しいと、そう感じるんだ。
感じるのだからしかたない。
そればかりは、自分の意思では覆せない。






何年が経っただろう。
変わらず俺はお前を愛しいと感じる。
それしか感情がなくなってしまうような感覚にさえ陥る。

流れる黒髪が。
輝く黒い瞳が。
強気な言葉が。
不器用なまでの優しさが。
意思の強い心が。
包み込むような笑顔が。

全部、俺だけのものになればいいのに。






「ハーレム?」

どうした?と心配そうな声。
なんでもねぇ、と長い髪をぐしゃぐしゃにかき回す。
不満そうな声すら愛しくて。
自分の事が心配になる。
大丈夫なのか、俺。

「ハーレム?」

再度呼ばれた名前。
うるせぇ。
頼むから少し黙ってろ。
今自分と相談中だ。
だが、答えなんて端からひとつしかない。
しょうがないんだ。
誰が何を言ったって。
俺はこいつが愛しい。
黒い髪と黒い瞳のこいつが。

「な、何だよ」
「なんでもねぇよ」

腕を伸ばして抱き締める。
戸惑った声に笑う。
なんでもねぇよ。
ただ、

「好きだぜ、シンタロー」

ただ、好きなんだと思った。
たった一つの、揺るがない真実。


end


08.11/21

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