捧げ物小説 2
□帰還
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訓練場では、剣を交える音が響いていた。
シンとキラの手合わせは、もう、何度目になるのか、わからない。
シンの剣がキラの頬をかすめ、キラの剣もまた、シンの頬をかすめる。
「腕を上げたね、シン」
「それは、こっちのセリフ」
「生意気だね」
「どっちが」
アスランは、レイと並んで、二人を見守っていた。
「二人とも、楽しそうだな」
「そうですね」
二人の間に殺気はない。力の拮抗した者同士で、剣を交える喜びが、見ている者に、伝わってくる。
キラが振り下ろした剣を受け止めて、はじき、シンは、後ろに飛びのき、剣を構え直す。
次の瞬間、二人は相手の懐へと、一気に間合いを詰めた。互いの剣の切っ先が、相手の喉元で、ぴたりと止まる。
引き分け。
二人は、さっと、剣を引き、一礼した後、アスランの方を見る。
「アスラン、癒して!」
「アスラン、癒してください!」
二人が、かすり傷とはいえ、傷を負ったのは、久しぶりだった。
わざとではないのだろうが、明らかにキスを期待している二人を見て、アスランは、苦笑した。
ゆっくりと、二人に歩み寄る。
シンは、キラをにらんだ。
「あんた、自分で癒せるんだろう?自分で癒せよ」
「嫌だよ。君だけアスランに癒してもらうなんて、ずるいじゃない」
二人の間に火花が散る。
「二人とも、癒してあげるから、もめないで」
アスランは、ため息をついて、手をかざした。傷が、瞬時にふさがる。
シンとキラは、がっかりした。
唇で癒してくれると思ったのに、手をかざすだけなんて。
まぁ、アスランが、他の男の頬にキスするところを、見ずにすんだからいいか。
そう、二人は、思い直した。