捧げ物小説 2
□チョコの香りに包まれて
1ページ/5ページ
アスランは夜中に目を覚ました。寝なおそうとしたが、眠れない。のどが渇いたので、なにか飲もうと、台所へ向かう途中、居間のコタツでシンが眠っているのが見えた。
シンはコタツで、すやすやと眠っていた。
「シン、起きて。ちゃんとベッドで寝ないと」
「ん〜」
アスランに体を揺さぶられて、シンは薄く目を開ける。
「ここでいいです。気持ちいいから」
「ダメだって」
アスランはコタツを切った。中が徐々に冷えていく。
「う〜。じゃあ、連れて行ってください」
「どうやって?」
「だっこ」
「はああ?」
「できないなら、ここで寝ます」
アスランは、ため息をついた。両脇を持って、シンの体をコタツの中から、引きずり出す。
それから、シンを横抱きにして、持ち上げようとしたが、持ち上げられない。
「シン、そんなに強く首にしがみつかないで。苦しい」
「アスランさんの首、なんか、いい匂いがする」
「そうか?べつに、なにもつけてないよ。気のせいじゃないか?……っ、シン!」
シンに首を、ぺろりとなめられて、アスランは動揺した。
「……甘い味……するかと思ったけど、しませんね……」
シンは、そう言って、夢の中に落ちていった。
寝ぼけて、変なこと、しないでほしい。
アスランはシンを抱き上げて、シンの部屋に連れて行き、ベッドに降ろした。布団を肩までかける。
しばらく立ち去らず、寝顔を見ていた。
寝顔は幼く、まだまだ子供だなと思った。
シンとアスランは、遠縁にあたる。シンはアスランの母親の姉の夫の妹の子供。つまりは、他人同然なわけだが、家が近いためにお互いの両親は親しく、二人は年の離れた幼なじみとして、育ってきた。
アスランは大学に入ってから一人暮らしをしていたのだが、シンの両親が仕事で海外に行くことになったのをきっかけに、シンと二人で暮らし始めた。
2月14日、シンは、学校から帰宅すると、先に帰宅していたアスランの部屋のドアを開けた。
つかつかと、歩み寄る。