捧げ物小説 1
□宴の後
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遠くから聞こえていた、琴や琵琶の音がやみ、アスランは宴が終わったことを知った。
おそらくシンが宴の後にやって来るだろうと、側仕えの者はさがらせ、一人、寝所で、起きて待っている。
今夜は、綺麗な満月。できることなら宴の席で月を見ながら、間近で楽の音を聞きたかった。しかし、先日、宴の席で御簾が強風でひるがえり、幾人かに、姿を見られて以来、宴に出ることは禁じられている。
あの一瞬で、あなたに何人の男が惚れたと思ってるんですか?当分宴には出ないでください!
シンに言われた言葉を思い出しながら、アスランは、うつむいて、ため息をついた。
あんな一瞬で惚れたりするものか。仮に想いを寄せる者が現れたとしても、帝であるシンのただ一人の妻、女御である自分に手出ししようと考える者など……。
足音がひたひたと近づき、シンがやって来たのかと、アスランは顔を上げた。しかし、立っていたのは、シンではなく、シンの異母弟だった。
手出ししようと考える者……いるのか。