短編小説
□9月1日明日への誓い
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シンがアスランに告白したのは、アスランがフェイスとしてミネルバにやって来て、すぐのことだった。
初めてアスランを見た時から、シンはアスランに惹かれていた。とても綺麗な人だと思った。アスハの護衛であることを腹立たしく感じた。
ユニウスセブンの破砕作業の時に、危険を顧みずに最後まで作業を続けようとしたアスランの姿が心に残って、アスランがオーブに行ってしまって会えなくなってからずっと、会いたいと、切実に思い続けていた。それが恋だと認めるのに、そう時間はかからなかった。
再会して、二人きりになった時に、想いを告げた。
「もう一度会えたら、言いたいと思ってたんです。アスランさん、俺……あんたが好きです。単なる憧れじゃなくて、抱きたいとか、そういうこと思っちゃうような好きで……。迷惑……ですか?」
アスランは、しばらく沈黙した後、口を開いた。
「迷惑だ」
アスランの言葉に、鋭い痛みを感じながら、それでも、好きです、とシンは胸の中でつぶやいた。
過去にきっぱりと自分をふったアスランに、夜、部屋に呼ばれて、シンは緊張していた。
どういうつもりなんだろうか。
「すまない」
シンが部屋に入るなり、アスランは謝った。
「プレゼント、用意できなかった。誕生日自体、忘れていた。ついさっき、思い出したところだ」
シンは、フェイスであるアスランとは、なかなか時間を共有することができない。アスランが射撃訓練に顔を出してくれることもごく稀だった。しつこくつきまとって嫌われたくはないからと、偶然会えることを期待しながらシンは毎日を過ごしていた。
アスランと一緒にいたいけれど、いられないから、何かもらえないかな、と思った。アスランがくれた物がそばにあれば、少しは寂しさを紛らわせることができるかもしれない。そう思ったシンは、以前アスランと偶然会えた時に、誕生日を教えて、プレゼントをくれと言ったのだ。
「申し訳なく思ってる。だから、ぶってくれ」
「え?」
目を閉じたアスランに呆然とする。
「な、なんで目を閉じるんですか」
「見られてると、叩きにくいだろ。平手でもこぶしでも、好きにしろ」
「好きにしろって、言われても……」
「今回のことだけじゃなく、お前にはわびたいと思ってたんだ。前、俺、お前のこと叩いたから」
「ああ、戦争はヒーローごっこじゃないっていう、あれですね」
「なにも、手をあげることはなかったなと、反省している」
「俺も叩いたら、おあいこっていうことですか……」
はぁ、とシンはため息をついた。
目を閉じているアスランと会話している間ずっと、シンの目はアスランの唇に釘づけになっていた。
そんなつもりはないとわかっていても、キスをせがまれているような気分になってしまって、いたたまれない。