長編小説

□10月29日 アスランSide後編
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「俺のこと好きなんですか?」
 シンの言葉に、頬が熱くなった。
「好き……って、そんな……お前は、弟みたいなものだから……」
 俺はうろたえて、言った。
「弟が女の子とエッチしたと思って、泣いちゃう兄なんて、おかしいじゃないですか」

 言われてみれば、そのとおりだった。
「…………確かに、おかしいな」
 おかしい。それは、認める。
「俺は、あんたのこと、兄みたいだなんて、思ったことありません。俺……恋人になりたいって思ってきました。アスランさんが……好きなんです」
 突然の、告白。シンが、俺を好き?
「シン……」
 恋人になりたいって言われて嬉しいと思うなんて、俺は、シンを……好きなんだ。そういう意味で。自分の感情を自覚した。シンが彼女としたと思って、あんなに苦しかったのは、シンのことが好きだからだ。嫉妬していたんだ。
 やっと、わかった。
 シンになんて言おうか考えていたら、シンに抱きしめられそうになった。心臓が跳ね上がる。とっさに、俺はシンを突き飛ばした。

「ごめん!」
 俺は謝った。
「やっぱり……俺の片想いですか……」
「あっ、そういう意味のごめんじゃなくて、突き飛ばしてごめんっていう意味だ。……俺はお前のこと……弟みたいなものだと思ってたけど、違ったみたいで……今、気づいたばかりで、いきなり、そういうこと、されるのは……」
 突き飛ばした理由を説明したいんだけど、動揺してしまって、上手く言えない。
「俺のこと、好きですか?」
「……うん」
「でも抱きしめられるのは嫌?」
「嫌じゃ、なくて…………心臓が、もたない。正直言うと、今、ドキドキして、倒れそうなんだ」
 俺は、シンにそう告げた。

「抱きしめたくてしょうがないんですけど!」
 シンからもっと離れないと本当に倒れそうなくらい、ドキドキしているのに、そんなこと言わないでほしい。
「無理だって」
「じゃあせめて、手を握らせてください」
 手を握る?どんなふうに?指をからめたりとかは絶対に無理。
「握手、な」
 普通の握手なら、儀礼的なものだし、比較的平気かもしれないと思って、俺は手を差し出した。
 シンが俺の手を握る。
「やっぱり、これも恥ずかしい」
 俺は文句を言った。ただの握手でも、握っている時間が長いと、照れてしまう。
「嫌ですか?」
「嫌じゃないけど」
「これから、恋人としてよろしくお願いします、アスランさん」
 恋人。そうか、恋人になるのか。海外にいる、シンのご両親に、申し訳ない。妹さんも、どう思うんだろう。俺のことを気に入ってくれているけど、まさかこんなふうになるとは思っていないだろうし……男の俺がシンの恋人になって、いいんだろうか。俺はシンの顔を見た。とても幸せそうな顔をしている。その顔を見て、幸せだと思ってしまった俺は、自分の気持ちに正直になることにした。
「うん。こちらこそ、よろしくな、シン」
 こうして、俺とシンは、恋人同士になった。
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