小ネタ

□雑記小話集3
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9月20日の雑記より。

シンアス小話


*家族*

 アスランは、目を見開いた。
 今、シンは、何をした?

「どうして……?」
「好きだから。こういう意味で」
 さっき触れた唇で、シンは言葉をつむいだ。

「やっと、本当の家族になれた気がしていたのに……」
 アスランは、うめくように言った。
 施設を出て、二人で暮らし始めたばかりなのに。
 身寄りのない子供同士、兄弟のように育った。他の仲間以上に、互いに、互いを特別だと感じていた。
「どうして、今までの関係を壊すようなことをするんだ!?」
「家族がほしかったのは、俺も同じです」
「だったら」
「でも、あんたの弟では、いたくない。俺は、あんたに、触れたいから。ずっと我慢してきた。もう我慢できない」
「……シン……」
「嫌でしたか?俺に、キスされて」
 嫌ではない。だからこそ、なおさら混乱する。血のつながりはなくても、シンは弟だと、ずっと思ってきたはずだった。子供だと、思っていた。

「俺は、あんたが好きです」
「お前は、勘違いしている」
「家族愛を恋愛感情と間違えているとでも?俺の気持ちを、否定することは、あんたでも許しませんよ」
 頬に触れたシンの目に、アスランはぞくりとした。よく知っているはずのシンの顔が、見知らぬ男の顔に見える。たまらなく、魅力的な、男の顔に。

「その気持ちを捨てろと言っても、捨てないか?」
「捨てません。奪わせません。この気持ちは、俺の、命だから」
 命。
 鮮烈な告白。もう一度唇を重ねられ、アスランは、身動きひとつ、できなかった。まるで、囚われた獲物。

 心の中で、弟としての、シンの肖像は、砕け散った。
 
「生涯の伴侶も、家族と呼べるんじゃないですか?」

 一生、離れるつもりはないと、告げるように抱きしめる腕は、力強かった。

 もっと、シンに、触れてほしい。
 願いは兄としてのものではない。アスランは、微笑した。

「そうか……じゃあ、やっぱり、シンと俺は、家族だな」

 別の関係になっても、やはり、家族だ。

 シンはアスランのよく知る、無邪気な笑みを浮かべた。全ての表情が愛しいと、アスランは感じた。
 

 END 
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