小ネタ
□雑記小話集3
3ページ/54ページ
9月20日の雑記より。
シンアス小話
*家族*
アスランは、目を見開いた。
今、シンは、何をした?
「どうして……?」
「好きだから。こういう意味で」
さっき触れた唇で、シンは言葉をつむいだ。
「やっと、本当の家族になれた気がしていたのに……」
アスランは、うめくように言った。
施設を出て、二人で暮らし始めたばかりなのに。
身寄りのない子供同士、兄弟のように育った。他の仲間以上に、互いに、互いを特別だと感じていた。
「どうして、今までの関係を壊すようなことをするんだ!?」
「家族がほしかったのは、俺も同じです」
「だったら」
「でも、あんたの弟では、いたくない。俺は、あんたに、触れたいから。ずっと我慢してきた。もう我慢できない」
「……シン……」
「嫌でしたか?俺に、キスされて」
嫌ではない。だからこそ、なおさら混乱する。血のつながりはなくても、シンは弟だと、ずっと思ってきたはずだった。子供だと、思っていた。
「俺は、あんたが好きです」
「お前は、勘違いしている」
「家族愛を恋愛感情と間違えているとでも?俺の気持ちを、否定することは、あんたでも許しませんよ」
頬に触れたシンの目に、アスランはぞくりとした。よく知っているはずのシンの顔が、見知らぬ男の顔に見える。たまらなく、魅力的な、男の顔に。
「その気持ちを捨てろと言っても、捨てないか?」
「捨てません。奪わせません。この気持ちは、俺の、命だから」
命。
鮮烈な告白。もう一度唇を重ねられ、アスランは、身動きひとつ、できなかった。まるで、囚われた獲物。
心の中で、弟としての、シンの肖像は、砕け散った。
「生涯の伴侶も、家族と呼べるんじゃないですか?」
一生、離れるつもりはないと、告げるように抱きしめる腕は、力強かった。
もっと、シンに、触れてほしい。
願いは兄としてのものではない。アスランは、微笑した。
「そうか……じゃあ、やっぱり、シンと俺は、家族だな」
別の関係になっても、やはり、家族だ。
シンはアスランのよく知る、無邪気な笑みを浮かべた。全ての表情が愛しいと、アスランは感じた。
END