小ネタ

□雑記小話集4
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8月14日の雑記より。

シンアス小話

*瞳の色、変わる時*

 シンの瞳は、俺と同じ翡翠。おそろいの色の瞳。顔立ちは違っても、瞳だけ見れば、まるで、兄弟のよう。
 血のつながった家族がいなくても、シンがいるから、寂しくなかった。
「あんたに隠していたことがあるんです」
 告げられたのは、月の美しい夜だった。

 シンの瞳が赤く変わる。血のような、鮮烈な赤。
「俺は、人間じゃないんです。我慢してきたけど、もう限界みたいだ。……瞳の色が変わってしまった」
 人間じゃない?そんなこと、どうでもいい。苦しそうな顔をしないで。
「……俺を、食べるのか……?」
 食べてもいい。シンになら、あげる。血も肉も。

 シンは首を横に振った。
「あんたと体をつなげたい。……逃げてもいいですよ。まだ、わずかに理性はある。一度体をつなげたら、あんたは逃げられない。俺だけを愛するようになる。魔力で強制的に心を奪われたくなければ、逃げて……」

 ははっ。気が抜けて、乾いた笑いが漏れた。
 兄弟のような関係ではなくなるのは、少し寂しい。でも、体をつなげることを、嫌だとは思わなかった。
 シンが俺の心を奪う?これ以上、どうやって?

「シンに、魔力があろうとなかろうと、俺の気持ちは変わらないよ。今だって、俺は……シンだけを、愛してるよ」
 シンの瞳から、透明な雫がこぼれた。
 泣かないで。泣かないで。愛してるよ。
 シンに、俺をあげる。全部あげる。

「愛してます……アスラン」
 嬉しい。
 シンの涙をぬぐって、頬にキスをした。
 見慣れぬ赤い瞳。魔力ゆえか、欲情ゆえか、染まった瞳。なんて、綺麗なんだろう。

 俺だけを、映す瞳。
 唇を重ねて、寝台に倒れる。背に回した手が、歓喜に震えた。


 END
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