小ネタ
□雑記小話集4
4ページ/52ページ
8月14日の雑記より。
シンアス小話
*瞳の色、変わる時*
シンの瞳は、俺と同じ翡翠。おそろいの色の瞳。顔立ちは違っても、瞳だけ見れば、まるで、兄弟のよう。
血のつながった家族がいなくても、シンがいるから、寂しくなかった。
「あんたに隠していたことがあるんです」
告げられたのは、月の美しい夜だった。
シンの瞳が赤く変わる。血のような、鮮烈な赤。
「俺は、人間じゃないんです。我慢してきたけど、もう限界みたいだ。……瞳の色が変わってしまった」
人間じゃない?そんなこと、どうでもいい。苦しそうな顔をしないで。
「……俺を、食べるのか……?」
食べてもいい。シンになら、あげる。血も肉も。
シンは首を横に振った。
「あんたと体をつなげたい。……逃げてもいいですよ。まだ、わずかに理性はある。一度体をつなげたら、あんたは逃げられない。俺だけを愛するようになる。魔力で強制的に心を奪われたくなければ、逃げて……」
ははっ。気が抜けて、乾いた笑いが漏れた。
兄弟のような関係ではなくなるのは、少し寂しい。でも、体をつなげることを、嫌だとは思わなかった。
シンが俺の心を奪う?これ以上、どうやって?
「シンに、魔力があろうとなかろうと、俺の気持ちは変わらないよ。今だって、俺は……シンだけを、愛してるよ」
シンの瞳から、透明な雫がこぼれた。
泣かないで。泣かないで。愛してるよ。
シンに、俺をあげる。全部あげる。
「愛してます……アスラン」
嬉しい。
シンの涙をぬぐって、頬にキスをした。
見慣れぬ赤い瞳。魔力ゆえか、欲情ゆえか、染まった瞳。なんて、綺麗なんだろう。
俺だけを、映す瞳。
唇を重ねて、寝台に倒れる。背に回した手が、歓喜に震えた。
END