小ネタ

□雑記小話集2
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1月18日の雑記より。

マグロネタ・シンがいやみで言った編小話

*足りない言葉*

「あんたって、マグロだよな」
 ベッドから降りながら、吐き捨てるように、シンは言った。
 硬直したアスランに背を向けて、シンは身支度を整えていく。

「せめて声くらい、出せば?盛り上がんなくて冷める」

 シンの言葉に、アスランは唇を噛みしめた。声を出してしまったら震えてしまいそうで、黙り込む。
 シンはため息をついて、部屋を出た。

 どうして、あんなこと言ってしまったんだろう。
 マンションのエレベーターの中で、シンは前髪を、くしゃりとかき上げた。
 アスランの心が見えなくて、ひどいことを言ってしまった。
 好きだと想いを伝えて、つきあえるようになって、嬉しかったのに。
 ベッドで、されるがままになっているアスランは、ひたすら耐えているだけのように見えて。
 アスランは流されているだけで、好きでつきあっているわけではないのだと、思えてならない。

 このまま大学へ向かおうとして、シンは今日提出しなければならないレポートを、アスランの部屋に忘れて来たことに気づいた。
 気まずいなと思いながら引き返し、合鍵で中に入る。

「入って来るな!」

 悲鳴のような声に、シンは驚いた。

「あんた……泣いて……」
 
 泣き顔なんて、初めて見た。
 アスランはベッドの上で、はらはらと涙をこぼしていた。
 
「なんで……?」
「なんでって……お前が、あんなこと言うから……っ!冷める、なんて……っ!」
「冷めたら、嫌なんだ?」
「当たり前だろ!」
「……あんた、俺のこと好き?」
「じゃなかったら、つきあうわけないだろ。こっち、見るなよ……せっかく、お前が部屋を出るまで我慢してたのに、戻ってくるなんて……」
「見たい。見せて」
 シンはアスランの両頬に手を添えた。

「見るな。泣き顔なんて、みっともない」
「見たいんだってば」
「お前は、見てほしくないところばかり見たがる。俺の体だって……」
「あんたの体?」
「見て、触って、がっかりするんじゃないかって、いつも、ひやひやするんだよ。声出せって言うけど、男のあえぎ声なんて、気持ち悪いだろ?」
「そんなふうに思うなら、男のあんたに惚れてないって」
「やっぱり男はダメだって、思い直すかもしれないじゃないか。お前に嫌われたら、俺、耐えられない……」
「嫌われないようにって身構えて、声も出せないで、マグロになってたってわけ?」
「…………マグロって言うな……」

 シンは笑った。アスランは目に涙をためたまま、シンをにらむ。
「あんた、バカだ」
「バカって言うな!」
「バカだよ。バーカバーカ」
「シン!」
「俺は、大バカだけど」
 
 シンは、アスランにキスをした。ついばむように、何度も何度も。
 
 言葉で伝えることは、とても大切だ。
 後で謝ろう。ちゃんと気持ちを伝えよう。
 でも、今は、ただ、愛しい恋人に、キスを。


 END
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