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□堂上家の家訓
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堂上は小さいケーキの箱を持ち、基地内の官舎の方に歩いていた。
「これで本当に喜ぶのか…?」
堂上は箱を見ながら心配そうに言った。
2階にある自宅に帰る為、階段を登っていき、玄関の前でケーキの箱を後ろに構えてドアを開けた。
「ただいま」
「おかえり!」
台所の方からすぐに声が聞こえてきた。
台所に顔を出すと、郁がエプロン姿で夕飯を作っていた。
堂上はよし、と思い足早に寝室に行き私服に着替えた。
ケーキを再度後ろに隠しながら郁の元に急ぐ。
「…郁」
「何?」
郁は堂上の方を向いた。
その瞬間堂上は箱を前に出しながら
「誕生日おめでとう」
と少し頬を赤く染めながら言う。
郁は驚きすぎて目が点になった。
が、すぐに元に戻り満面の笑みを堂上に向けた。
「ありがとう!すごい嬉しい!」
「あぁ。…だが、今日思い出しんだ。ケーキは買えたんだがプレゼントを買ってる暇がなかった。すまん…」
堂上は申し訳なさそうに頭を下げた。
郁は少し考えるような顔つきになった。
「…あ!篤さん顔上げて!」
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