ぽけ擬部屋
□思い出の木
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夕陽が沈む時、
一人の女性がある森の中へと降り立った
背中の翼は瞬時に消え、歩き出す
何かを探すような視線はある一点に止まった
見つけた…
小さく呟く声は風に攫われる
彼女が見つけたのはある一本の木
その木には文字が刻まれていた
そっと文字をなぞる
その木を、文字を慈しむかのように
そんな彼女の元に、一人の男性が空から舞い降りる
「菫」
呼ばれた女性-菫-は振り返ると嬉しそうに駆け寄った
「ソラ様!」
ソラと呼ばれた男は駆け寄ってくる菫に微笑みながら彼女を抱き寄せる
「ソラ様も来たのですね、この木の元に」
「ええ、これは貴方との思い出の木ですから」
そう、この木は貴方との思い出が詰まった大切な木
この季節になると二人は必ずこの木の元へとやってくる
それは、二人が自然と結んだ約束
「今年も綺麗な紅葉ですね…」
「そうですね、本当に綺麗です」
「でもソラ様の方が御美しいですわv」
「菫の方が綺麗です」
言われて顔を赤らめる彼女を愛おしく想いながら木を眺める
「菫」
「はい」
「愛しています」
「私も…愛しております、ソラ様」
まるで神の元で、愛を誓い合うように紡ぐ詞
これからもずっと、貴方と一緒にいれますように
また、この木のもとで…
思い出の木
(二人の名前を刻みつけた木)(今も尚 残っている)(移りゆく景色の中で・・・)