短編
□金木犀
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「隊長…、大丈夫ですか?」
「あぁ、松本か。休暇は終わったのか。」
日番谷は机の上に置かれたたっくさんの書類の間から少し顔を出した。
「目の下にすっごい隈が出来てますけどいったい何日寝てないんですか?」
「もうかれこれ5日くらいか?」
首をかしげながら聞いてくる日番谷は口から魂のようなものが出そうなくらいヤバイ状態だ。
「いったいどうしてこんなにも書類があるんですか?」
「…一番まともに仕事をしていた藍染が風邪をひいて、仕事が十番隊に回ってきたのが2割、残りの8割はお前が隠し溜まってたものだ。しかも、期限が明日までじゃねーか!」
立ち上がりすごい剣幕で見てくる日番谷に松本は何も言えなかった。そして、いつもより眉間のしわが多かった。
するとそこに
「失礼します。日番谷君いますか?」
雛森が来た瞬間眉間のしわが消えたのを見た松本は少しほっと息をついた。
「日番谷君!どうしたのその隈。」
「雛森〜、隊長ったらもう5日も寝てないらしいのよ〜。」
どさくさにまぎれて松本は雛森に抱きついてきたが、もちろん日番谷はそれを見逃さなかった。
「松本!てめぇ雛森に抱きつくんじゃ「そうだ!日番谷君、私いいところ見つけたからそこに行こうよ。」
「いやでも書類が…。」
日番谷の目線の先にはたくさんの書類が。
「隊長。私がやっときますから行ってきてくださいよ。」
さすがに罪悪感を感じた松本は日番谷の背中を押していく。
「…じゃあ、頼んだぞ。」
「行こっ。」
「あぁ…。」
雛森に手をひかれ二人は執務室を出て行った。
「日番谷君、ここだよ。」
雛森に連れられついた場所は
金木犀の咲き乱れているところだった。
「この前散歩してたらいい香りがしてたから来てみたら、ここをみつけたの!」
確かに、甘い香りが漂いなんとなく心が落ち着いてきた気がしてきた。
「日番谷君、少しここでお昼寝しよ。」
「雛森。」
「何?」
「連れてきてくれてありがとな…。」
金木犀の香りに包まれ眠る二人の寝顔は本当に気持ちよさそうであった。
後日、日番谷の目の下の隈は綺麗になくなっていた。