鳳宍小説
□無力ほど辛いものなどない
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「宍戸……さん?」
返事は……?
「宍戸さん?宍戸さん??」
宍戸さん?宍戸さん?宍戸さん?宍戸さん?宍戸さん?宍戸さん?
あれ?おかしいな……
いつもなら、"よう!長太郎!!"っていって頭をなでてくれる宍戸さん。
そして今日も
"よう!風邪が長引いてなぁ〜明日には直すからよッ!!"
って頭をくしゃくしゃにして笑ってくれる。
ハズだったのに……。
なんだ。これは。
やけに甘ったるいにおい。
薄暗い部屋。
そこにいる一人の黒い影。
その黒い影はドアから差し込む光で誰だか識別できてしまう。
それは紛れもなく鳳のあいたかった、
宍戸 亮
宍戸は鳳のほうを見ると話しかけてきた。
その目はきちんと鳳を捕らえてはいない。
うろつな眼差し。
「長太郎…かぁ?おまえもさぁ〜すってみればいいじゃん♪」
そういって鳳の鼻と口に袋を当てる。
抵抗できない……。
宍戸と鳳の体格差だったら鳳のほうがぜんぜん上だ。
しかし、相手は宍戸だ。
暴力を振るうことは絶対にしてはいけない。
クソッ…抗えない……。
鳳は隣にいる跡部に懇願するようなまなざしを向ける。
しかし跡部は立ったまま呆然とし、今はいない
さっき宍戸が座ってた場所を凝視している。
(夢の中みたいにふわふわする。
とても気持ちがいい……。)
鳳はそんな意識のまどろみの中で最後の意志を跡部に伝える。
「跡部さん……!助けてください!!!」
跡部はその鳳の声で意識を取り戻したのか、宍戸を鳳から引き剥がす。
そして宍戸の後頭部を強くたたいた。
すると宍戸はドサリと床に伏す。
鳳は一気に肺に入ってくる空気にむせながら
生理的な涙がこみ上げてくるのを必死にこらえる。