鳳宍小説

□声だけなんて
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無視しよう。


宍戸は今疲れてるのだ。
それはもう、テニスをし終わった後よりも。

なれない掃除をする方が普段慣れている運動をするのよりよっぽど体力を使う。

だがなおもインターホンは宍戸を呼びつずける。



ピンホーン  ピンポーン  ピンポーン  ……



「だぁ!!うるっせー!!!!」


宍戸は部屋を飛び出した。
はやくこのムカツク奴の顔が見たい。

高速で階段を下る。
それはもう試合のときに見せる超高速ライジングカウンターよりも。

そして素足でドアをあけに行く。

そこにいたのは、銀髪で長身な彼だった。


宍戸の怒りはどこか遠くに消えポカンとした顔で長身の彼を見上げる。


「宍戸さん。こんにちわ」

そんなさわやかな口調で言われてしかもそれに万面の笑み。
宍戸の疲れはいつも間にか消え彼の胸へととびこむ………わけがない!!!



「長太郎……何回もうっせーんだよ!!!」



見事にアッパーカットがきまる。
プロ顔負けだ。

「こちとら、掃除して疲れてんだよ!!」


「ハハハ痛いです、宍戸さん。会いたくて……迷惑でしたか?」


あー…もうやめてくれその、捨てられたような子犬の目で見てくるのは。
もう起こる気にもなれなくなってくるだろう。

「…っ。いや迷惑じゃなーけど。てゆかオマエ出かけるって言ってたじゃん」


てれ隠しにすねてみる。


「いえ…断ったんです。宍戸さんに会いたくて」


「なっ……」


顔に熱が集中していくのが自分でもよくわかる。

____ぜってー顔真っ赤だ……


「あ、宍戸さん顔真っ赤になってる」


「うっうるせー!!!別に嬉しくなんかないしッ!!!」


_____ああああ…恥ずかしい



「ねぇ。抱きしめていいですか?」


真剣な顔で問う。


「ぃゃ…」


「やなんですか!!」

さっきの真剣な顔とは打って変わりまた
捨てられた子犬の目になって宍戸を見つめている。


顔がまともに上げられない。
恥ずかしさのせいか声が小さくなってしまう。

しかし、鳳は少しでも宍戸の言葉を聴き逃しまいと静かに聞いていた。


「……ぃゃ……いや……好きにすればいいだろ」


その言葉を聞いて嬉しそうに微笑むと
元気良く返事をして、宍戸の居る元へと歩み寄った。

宍戸は最初、こいつ犬だったらぜってーしっぽ降ってやがるな
とか悠長なことを考えていたが、鳳が近づくにつれ心拍数が上昇していく。
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