鳳宍小説
□声だけなんて
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「じゃあお前の家いってい?]
『えぇ!!スイマセン。午後から家族で出かけるんですけど……』
長太郎は、どうしてこうも申し訳なくあやまれるんだろう。
電話の向こうで頭を下げているのがよくわかる。
「んあ、いいって。んじゃ、しっかり子守すれよッ!!」
『ハイッ!!あ、暇なときは、お風呂場をきれいにするといいですよ。それじゃあ。』
−−−−ブツ
電話が切れた。
暇つぶしになるだろうと思ってかけた電話がものの3分も立たたないうちに終わった。
宍戸はバタンと後ろに倒れこみ呟くように言った。
「風呂なんてテメェーのうちより広くねぇーよ。」
こうつぶやいた瞬間から文句が込み上げてくる。
つーか、なんで暇な時に風呂掃除なんだよ。
風呂掃除なんててきとうにやりゃーきれいになるだろ。
てゆうか、金持ちのボンボンのくせに風呂掃除かよ。
自分でしたことねぇーのかってんだ。5分もかかんね−ゾ!!
いや、風呂掃除じゃなくて、おれが電話してやったのに用事入れとくんじゃねーよ。
家族なんていつでもあえるだろう!!!
家族より俺の方が大切じゃないのかよ!!!
そう思ったとたんに目の奥がじわじわと熱くなってくる。
宍戸はそんな自分に気づかないふりをして立ちあがった。
そして向かった場所は………風呂場。
宍戸は内心いらいらしながらも正直に、『暇』なのだ。
なおかつ好きな人のアドバイスだもの、聞き流すわけがない。
「クソッ」
宍戸はバス●ジックリンを手に取り何回も浴槽に噴射した。
そしてスポンジを手に取り勢い良くこする。こする。こする。
すると、水垢だらけだった浴槽がきれいになっていくばかりである。
味をしめた宍戸は浴槽を一転の曇りの無いほどにピッカピカにした。
結果的に暇は潰せたわきれいになったわで
気分がはずんで家の中、全部掃除までしてしまった。
「ふぅ。気持ちーな」
家の中全部の掃除が終わりまた自分の部屋に戻る。
時計を見ると……昼が過ぎてもう2時になろうとしている。
疲れたのか睡魔が襲ってきた。
なので本格的な眠ろうとした矢先に玄関のインターホンが宍戸を呼び出した。