ノベル(短編集
□おやつの時間
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使用人室の中は無人で、まるでそこだけ空間が切り取られているような静けさ。
僕はキョロキョロと辺りを見渡し、もう一度誰もいないことを確認すると、使用人室の冷蔵庫の前に立つ。
そしてゆっくりと冷蔵庫のドアを開くと、辺り一帯に魅惑的なバニラの甘い香りが広がった。
ゴクリと生唾を飲む。
今日の出来もいい感じだ。
形といい、香りといい……さすがは郷田さん。
この道のプロだ。
僕は甘い香りを漂わせているそれに手を伸ばす。
薄いベージュ色のそれは、郷田さんお手製の[おっぱいプリン]だ。
僕は取り出したるそれを、慎重にテーブルの上へと運び出した。
今日の僕のおやつ。
落としたりなんかしたら大変だ。
…そして、それを置き終わった時、僕は誰かの視線に気付いた。