世界の物語

□第16話「出会い」
5ページ/5ページ




「盗られた所を偶然見たんだよ、取り返したはいいがアンタはいなくなってるし」


リィアナ「取り返してくれて、ありがとう」




財布を大事に抱えて、頭を下げた少女に、青年は自分の頭を掻いた。




「ま、こんなむさ苦しい場所に探しに戻ってくるとは思わなかったけどな」


リィアナ「むさ苦しい?」




「ユーリ!」



この場に似つかわしくない女の子特有の高い声が響く。

声のする方を見遣れば、薄いピンクの短い髪の女性が手を振って叫んでいる。



彼女が呼び掛ける、視線を辿れば隣にいる青年。

ユーリと呼ばれた横の青年は頭を抱える。



ユーリ「エステル、何が…」

エステル「凄いです!」

ユーリ「だから…」

エステル「お魚を解体してるんです!私初めてみました!」



はしゃぐ少女にユーリは勘弁してくれと言わんばかりにため息をはき、リィアナに向き直る。




ユーリ「アンタもさっきの男と一緒じゃないみたいだし、ここは色々危険だ、真っ直ぐ帰れよ」


リィアナ「うん、本当にありがとう」



(一人で来ると危険?)




改めて御礼を言うと、青年は小さく笑って背中を見せる。

黒く長い髪を揺らしながら仲間だろうエステルという女性の所まで歩いて行った。



彼等が合流したのを見届けて歩きだす。




リィアナ「見つかってよかった」



手の中にある水色の財布を抱きしめてリィアナはバンエルティアへの帰路についた。


何故か彼らとはまた会える、そんな気がしたリィアナだった。


















エステル「さっきの方が財布の持ち主です?」


ユーリ「ああ」


エステル「見つかってよかったですね!」


ユーリ「そうだな、誰かさんと似ていて天然で危なっかしい感じだがな」


エステル「…それ、私のことです?」


ユーリ「さぁな」






第16話・終
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ