世界の物語

□第12話「呼ぶ声」
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急に黙ったカノンノにリィアナは首を傾げる。



カノンノ「ごめん、ちょっとおどろいちゃった」


リィアナ「どうして?」


カノンノ「だって、この話をして笑わなかったの、あなたが初めてだもん」



嬉しそうに笑うカノンノ。

しかし次第に笑顔に影がうっすらかかる。



カノンノ「みんな、『そんな事あるもんか』って言うけれど、信じるしかないんだ、私には…」


リィアナ「……私も空から声、聞こえてた」


カノンノ「え…?」




瞬きをして少女はリィアナを思わず凝視する。




リィアナ「今はもう聞こえないけれど」




もう一度空を仰ぐけれどなにも起きない聞こえない。

聞こえたところでどうするとか考えてないが何故か気になる声。



船縁から顔をだして海面に写る、隣のリィアナの顔を見ながらカノンノは呟く。



カノンノ「そっか…リィアナにもリィアナに聞こえる声があったんだね」


リィアナ「うん、自分にしか聞こえないからって変なことじゃないと思うよ、私やカノンノにとっては夢や幻とかじゃなくて本当だから」



リィアナの言葉に突然カノンノは彼女に背を見せて両手を顔に持っていく。


ほんの数秒。

再び向き直った時、少女の頬に薄く残った…涙の筋。



カノンノ「呼んでるのは…あの声は…私のお父さんとお母さんじゃないかなって思ってる……ううん、信じたいの」


リィアナ「うん」



カノンノ「…リィアナ、ありがとう…」





リィアナは、そっ、と優しく隣にいるピンクの髪を撫でた。














第12話・終
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